グァテマラ



中米諸国は日本ではひとまとめで捕らえられがちだが,国によって文化・政治・経済状況は全く異なる。メキシコの南東に位置する英領べリース(ベリーセ),南に位置するグァテマラ,ホンジュラス(オンドゥラス)・エルサルバドル・ニカラグア・コスタリカ・パナマを経て,南米大陸につながる。これらの国々を北から南へと縦断するトランスパンナム(パンアメリカン道路)は,パナマ狭地でジャングルと険しい地形に阻まれ,一度途絶えた後,再び南米のコロンビアから南を目指す。



グァテマラ








グァテマラに入るが,首都グァテマラ

シティには行かず,その少し南に位置

する古都アンティグアに向かう。













アンティグアにはスペイン語を学んで

いる日本人が結構いると聞いていたが,

幸いなことに「はちあわす」ことはなかっ

た。旅行者に有名「禅」というレストラン

がある。










妙に小奇麗で,しかし観光地というには

あまりに閑散とした街並み。古都ではあ

るが,興味をそそられるような街ではな

かった。












高地にあるアンティグアから今回の中南米

の旅で,最大の目的地であったティカール

に向かう。ティカールはグァテマラ北部の

低地ジャングルに位置するマヤ時代の一

大中心地であった。







山間部のコバン辺りで軍隊によるチェッ

クを受ける。この辺りは政情不安の為,

局地的な銃撃戦などが続いている地域

だ。半年前にもヨーロッパ人観光客が

襲われ,2人が銃撃され死んでいる。

公には「内乱」とされているが,実際は

「追いはぎ」と同レベルらしい。








ブラインドカーブの脇に人影が見える。軍

隊のチェックだ。小銃を掲げて,停車を促

す。下っ端は意気揚々と厳しい口調で山

積みの荷物を差して中身を尋ねる。降ろ

すのは面倒なので,口で説明していると,

早く降ろして見せろと銃口を向け始める。



先に止めたトラックの荷台に居た上官が,俺を呼び,パスポートを見せろという。そこで手渡すと,ペラペラ

とめくりながら,「日本から来たのか。どこまで行くんだ。」とお決まりの質問が始まる。少しばかり雑談に付

き合っていると,荷台のオレンジを2〜3個渡してくれ,開放してくれた。上に立つ人間には,「見る眼」とそ

れなりの「度量」が必要なのだと実感した。




低地に下り,ジャングル地帯に入る。

午後に入り,大きな有料橋の掛かる

リオ・ドゥルセという小さな部落に行き

着いた。ジャングルと大きな川と場違

いな程に近代的な大橋が妙に調和し

ている。バイクの通行料は0.5ケッツァ

ル(100円ちょっと)程だが,地元の人

はタダなんだろうなと思ったりもする。

まだ時間は早いがなんとなく気に入ったので1泊することにする。「ホテル」と呼べるようなものは当然なく,

レストラン(食堂)の納屋のようなところを借りる。1.5ケッツァル。一泊のみの滞在の時には,荷物の積み下

しが面倒なので,なるべくそのままで泊まれる場所を探す。食事もそうだ。いちいち自炊することはしなろい。

手間もそうだが,スーパーがある訳でもなく,食材の確保自体が難しい。その上,折角なのだから現地の普

段食をなるべく食べたいから,そこらの安食堂が一番いい。




一晩中,体がかゆく,眠れなかった。

朝,毛布を見ると数匹の南京虫が居た。

てっきりこれが原因だと思ったが,実は

夕べ食べた川蟹のアレルギーだったら

しい。午後にはおさまった。













ティカールに向かう途中,フローレスの町に立ち寄る。

この先は町がないので,ここでガソリンや食料などの

物資を買い込む。ティカールでは1週間から10日滞在

出来るようにパンやら果物を買う。自炊の時には米も

炊く。中米では米は珍しくはない。味も良い。












街はちょうどお祭りで賑わっていた。












当時,ティカールに向かうには,小型飛行

機を利用するのが一般的な交通手段で,

ジャングル中を縫う道路が1本あるが,

定期バスはない。













フローレスからティカールへの途中,数戸

しかない部落に万屋があった。タバコと

コーラを買いに入ると可愛い女の子が

店番をしている。彼女は既に店主の貫禄

で仕事をこなしている。
















3〜4時間の道程だろうか。道路はそこそこ整備されているが,

充分に整備されていない区間もある。車のチャーターなども可

能だが,楽ではない道程を避け,殆どの客は飛行機でやって

くる。


















ティカール遺跡は国立公園になっている。

入園料はちょっと高めの1ケッツァル

(約200円程)だったが,退園しなけれ

ば何日居ても一度支払えばいいらしい。

一週間程滞在したが,追加徴収はされ

なかった。











グァテマラのジャングルといえば「葉切り

蟻」だ。彼等は沢山の木の葉を顎で切り

取り,巣に運んで,巣の中で発酵させて

キノコを栽培し,食用にするそうだ。



       行列はどこまでも続く。








公園の中にはコテージ風の小さくて

可愛らしいホテルが一軒だけある。

5〜6部屋しかないらしい。その中に

レストランがあるそうだが,それ以外

には食堂も店も何もない。公園には

キャンプサイトがある。セメント土台

で藁葺きの屋根のある。丸い島のよ

うなサイトが数個設置されている。隣

のサイトのキャンパーがゴールデンマジックを手に入れたからと分けてくれた。





吼え猿や野鳥の声は途切れることがない。

深くジャングルに響き渡る。毎日,午後か

ら夕方近くなると,サワサワっというざわ

めきが,どこからともなく近づいて来る。

スコールだ。数分から数十分で遠ざかっ

ていく。









昨日降ったスコールは,今日の日の出と共に霧とな

る。陽が高くなるにつれ,霧が薄れていく。霧は消

えるのではなく,にょきにょきと天に昇り始める。

まさに雲が生まれいずる地だ。そしてまた数時間後

にはスコールとなってジャングルをざわめかせる。















ティカール遺跡には5つの大きな神殿ピラミッドがある。向かい合って建つ1号神殿と2号神殿は完全に復元

されている。柔らかい石灰石で出来た階段は観光客の昇降による磨耗が激しく,後に転落死亡事故も起き

たようで,1年後の復路の途中で訪ねた時には手すりの鎖も外され,昇降が禁止されていた。











1号神殿から望む3つの神殿は,今では

樹木に覆われているが,本来は土台まで

見通せたのであろう。














ジャングルに飲み込まれ滅亡した文明

に,ジャングルの背景が似合うというの

は皮肉なものだ。


















後ろ髪を引かれながらもティカールを後

にする。首都のグァテマラシティで1泊し,

エルサルバドルに向けて出国の準備を

する。













グァテマラシティは現首都だが,古都アン

ティグアの少し北側にある。やはり高地な

ので気温は高くはないが,アイスクリームの

屋台が沢山出ている。中央部は活気があり

賑やかだ。






ーEND−