● スポーク車輪 Spoked wheels ●
実機について
第一次大戦中の複葉機(単葉・三葉も含む)の車輪は,自転車の車輪のようなスポークタイプが使われていた。実際にはその外側に帆布でカバーが掛けられていることが多く,模型ギャラリーにあるような見てくれだった。大きさは何種類かあったようだが(ギャラリー内の表参照=ドイツ機),概ね,単座戦闘機と複座爆撃機,更には大型爆撃機のそれぞれのクラスでほぼ共通だったらしい。また,現地では修理の為に,壊れた機体からの流用などもあっただろうから,あまり厳格な適合は不要だと思う,のは俺の適当な性格からであるw


キットについて  (オーダー2013年暮れ)
これはキットではない。「Steven Robson」氏が趣味で制作し,その一部を愛好者に頒布している作品で,それを4個(2機分)分けて頂いた。よって,一般的な模型キットのように市場に流通はしていないし,数も限られているが,パーツ素材が残っているうちはオーダーメードで作ってくれるそうだ。個人的にメールで注文することになる。彼によると,日本からの引き合いは私が初めてということなので,現時点では,日本にはうちにある2セットのみが存在しているだけになる。だからどうってことじゃないが。到着したら,日本の複葉機ファンにも紹介してくれとの弁だったが,それは営業(沢山売りたい)の意味ではなく,模型ビルダーとしての本能からだと思う。なぜなら,元々沢山は作れないものだし,既に数が限定されている上,頼まなくても欲しい人なら絶対に欲しい作品だからだ。紹介してくれの真意は,どや!凄いやろ!ってとこだろうw うん,確かに素晴らしい。少なくとも俺には作れん!

実物データの関係で,当面はドイツ機用のみの制作で,今回のリムの後はフォッカー・アインデッカー用の一周り小径のホイールを作る予定で,2014年2月半ば現在ではリムの成形は終わったそうだ。こちらは10機分程度しか作らないということで,完全予約制で頒布ということだ。また,現在完成している車輪は,イギリスのアルバトロス出版社出版のウインドソック誌でも紹介・広告されていたが,既に予定数完売だそうだ。売り切れギリギリで知り合いの複葉機ファンの人に頼まれた2セットを追加購入出来た。これで日本に4セット存在することになった。

このスポークド・ホイールのリムは,実物データを元に3Dキャドで設計し,純銀のロスト・ワックス・キャストで作られている。ハブは3点程の真鍮パーツで構成されている。また,40本のスポーク素材は2種類(元々は純銀製を含めた3種あったらしい)あって,選択が可能だ。一つは,直径0.14mmのトライ・フイラメント製で,もうひとつは0.15mmのスチール製である。前者は表面が黒くグラファイト加工された日本製の線材(シマノのメタルラインで既に製造中止)だそうだ。

2度めの注文までの数度のメールのやりとりで,日本の福原金属がおやじさんの逝去と共に肉薄極細真鍮パイプや極細の真鍮・洋白線の製造技術が消え去り,自作模型ファンには材料不足という厳しい状況になっているというようなことを書いたところ,今回のホイールに使ったトライ・フィラメント線とスチール線を数メートルずつ無料で分けてくれた。今後何かと役に立ちそうだ。

さて,ホイールサイズだが,リム自体はワンサイズであるが,外側のゴム製タイヤの直径と幅が2種類ある。それにより,760×100(実物サイズの外径×タイヤ幅)と810×125サイズの車輪を再現している。実物のそのようになっていたようだ。実機の機種とホイール・サイズの関係は,下のギャラリーの写真の中に対応表を貼っておいた。また,ウイングナット社のキットに使用する場合,両者のスケール精度が高いので,キット付属の車輪の中央部を切り抜き,タイヤ部だけにしたものをこのリムに嵌めると綺麗に収まるようだ。ゴム素材というのは経年変化や質感に置いて好ましくないことが多い。実物のタイヤもゴムなのにゴムを使うとらしくないというのも,模型の面白いところだ。


Steven Robson氏について
1次世界大戦機ファンであり,それが高じてこのスポーク車輪を作るに至ったそうだ。普段は大きな病院の救急救命で看護師として勤務し,最近の休日は,専らこれらの車輪作りに没頭しているという。テレビドラマで描かれる救急救命とはイメージが違って,長期休暇もちゃんと取れるらしい。夏にあたる現在はオーストラリアでも高温が続き,日本と同じく熱中症などが多発し,救急救命は忙しいそうだ。

彼は気さくな人で,南オーストラリアに奥さんとコーニッシュ・レックスのドゥーガル君とポピーちゃんというとてもエキゾチックな顔つきの猫達と暮らしている。猫っかわいがりをし過ぎるおかげで,猫達が一家のご主人になっているというのは我が家と同じだ。

彼も言うまでもなくウイングナット・ウイングスのファンだが,今のところドイツ機にしか興味がなく,ドイツ機のキットを買い集めているそうだ。元英国の領地であり,いまでも英国と馴染みの深いオーストラリア人でもドイツ機の方が魅力的なんだなぁ。彼はスロービルダーを自称し,作るのは年に1機程度だと言うから,まだ3〜4機しか完成していないのだろう。十数機が箱に入ったままで,退職後の楽しみにしていると言う。どの国の模型好きも同じように未制作のキットが山積みになっているみたいだ。


最後に
本来ならこういうパーツも自作したいところだが,生きているうちに制作したいキットが複葉機以外にも山程鎮座しているので,ここまで手がけることは時間的にも気力的にも,またなによりも技術的にも難しいことで,他の人の作を借りることになっているのはいちモデラーとして残念ではある。本来なら,どや!俺が作った車輪,かっこええやろ!って言いたいところだ。

実は,スポークホイールは,このサイトにも挙げてあるように,実際に自分でも作ってアインデッカーに取り付けたことがある。が,あくまで付け焼き刃であり,シャープさは言うまでもなく,スポークの数で言っても評価に値しないものに過ぎない。今回の物と並べられたら捨てたくなるレベルである。まぁ,当時のホイールは自転車やバイクの車輪と同じだったんだよ,っていうのがわかればいい程度で,適当に作ったものなので納得はしているのだが。(負け惜しみやぁ〜)

スティーブンの車輪は実によく出来ている。が,完璧ではない。彼ともメールで色々話したが,ニップルが省略されている。特に今回のホイールでは,リムに開けたスポーク用の穴径は0.5mmだそうで,スポークとの隙間がかなりある。現在製作中のアインデッカー用のものは0.3mmにしているそうだ。だが,折角この隙間があるので,ニップル表現として,そこに真鍮パイプなどを被せるともっと良くなるのではないかと提案してみた。彼もそのことは考えていたようだが,それをやっていると途方もない時間が掛かるので,最早頒布出来る代物ではなくなるだろうという見解で,課題として来年位には自分用として挑戦してみたいということだった。

ニップル表現の為に,これだけ出来の良いものを一度解体してスポークにパイプを通すのも馬鹿げているし,きれいな状態では元にも戻らないだろうから,そのつもりはないが,パテなどで穴の隙間を埋めつつ,盛り上げることでニップル表現が出来るかも知れないと考えてはいる。が,0.15mmという細いワイヤーの周りに均一に0.01mm程度肉付けすることは,それも40本(×4個)を同様にというのは,簡単ではないだろうし,木を見て森を見ずになりかねない。なんでもスケール化し再現するのが模型ではなく,デフォルメのセンスが模型の真髄だ,というのはかねてからの俺の持論でもある訳で,また,他人の完成作に手を加えるのもどうかと思うしね。これがキットなら自分なりに手を加えるが,これは完成品として作ってもらっているものだ。丹念に味付けをしたカレーにドボドボソースを掛けるような無粋な輩と同じにはなりたくはない。

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制作当時のフォーラムの記事(現在は存在しない)

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● ルイス機銃 Lewis machine gun ハセガワ ●
実機について
第一次大戦中に英国で多様された機銃である。航空機搭載時には主に上翼上面にフォレスターを介して取り付けられており,フォレスターのレール上を滑らせ,ほぼ90度程角度を変えられたが,これは射撃時に狙いを定める為のものではなく,弾倉の交換時や弾詰りの対処で機銃をパイロットの近くにずらす為のものである。トリガーはワイヤでコクピット内部から操作出来るようになっていた。


キットについて
大昔のハセガワのキットで,スケールは1/8。同時期に販売されていたミュージアムモデルの1/8のソッピース・キャメル用のものに,額枠を追加して単品キットにしたもの。今回ヤフオクで1500円で購入。元は600円程である。30年寝かしておけば倍額になるってことか?前回のビッカース銃は比較的多く見掛けるが,ルイス銃の方はあまり見掛けない。当然年季の入った箱だ。DR.Iのキットに付いているシュパンダウ機銃は見たことがないが,単品キット化されなかったのだろうか?

ミュージアムモデルの1/8シリーズには,キャメル,フォッカーDR.I,SE.5aがあった。ホワイトメタル,木,プラスティックなどの複合素材で構造が精密に再現されている。DR.Iのみ手持ちであるが,制作中もその後も置き場所が問題で,手付かずである。制作自体は,ラジコンのバルサキットの機体を作っていた人には全く問題はないレベルだ。被服のないスケルトン(骨格)モデルなので塗装の手間がない分楽だろう。


制作について  (制作2012年小雪)
写真にもある通り,パーツはほんの数点で,塗装も含めて数時間で完成する。昔なら苦労しそうな塗装も,現在は大変質感に優れたメタル系塗料があるので手軽に高質感のものが完成する。

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● ル・ローヌ  Le Rhone 9J 110hp  ●
実機について
1912年にフランスのローヌ社によって開発された9気筒空冷80hpロータリーエンジンは9Cと呼ばれ。ニューポール10に搭載されていた。後に110hpにバワアップされたこのエンジンは9Jと呼ばれ,ニューポール10や11型の後継機である17型以降の機体に搭載された。

詳細はこちらのページを参照


キットについて
ハセガワ 1/8
もう30年も前になるだろうか。ハセガワはミュージアムモデルと銘打った1/8スケールの複合素材によるディスプレーキット3種を発売した。ソッピース・キャメルとフォッカーDR.Iとスパッドである。初期キットのエンジン部分はメタル製であったが,その後プラスティック化され,そのエンジンだけを販売したのがこのキットだ。

その後このキットは,所定販売数を完了してからは長らく絶版品となっていたが,別ページの作例にあるクレルジェが2011年3月に再販されたて半年ほどでこちらのキットも再販された。箱のみ新しいデザインになったが,中身(金型)は従来のまま。年代を感じさせる「バリ」や「ヒケ」がそこそこあるキットだ。なぜかプラスティックが異様に硬い。昔のタミヤやハセガワのキットのプラスティックは硬かったように記憶しているが,最近は柔らかめの海外のキットをよく作るせいが,異様に硬く感じる。

製品化の経緯を考えると仕方がないが,1/8というのは少々大き過ぎる気がする。ローデンから1/32のエンジンだけのキットも出ているが,これは少々小さい。1/16位が個人的には嬉しかったが。また,同シリーズのフォッカー用のル・ローヌ(オーベル・ウーゼル)エンジンも同様に発売されたが,今回は再販されなかったのが残念だ。再販の主なターゲットは複葉機ファンではなく,パーツ転用しているらしいマシーネン・クリーガーのファンのようであるので仕方がないのかも知れない。


制作について  (制作2012年芒種)
今回も前回のクレルジェ同様に中学生並の仕上がりだ。このスケールだともっと細部まで表現されたキットでもいいと思う。ワンシリンダーのカットモデルとか。ただ,複葉機モデルに搭載されているエンジンは様子が余りよく見えないので,それを外に出して拡大し,どんなものがイメージし易くする目的では充分だろう。

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● ビッカース機銃 Vickers machine gun ハセガワ ●
実機について 第一次大戦中に英国で多様された機銃。陸軍では循環式の水冷として使われることが多かった。外側のウォータージャケットのお陰で太くなっている。航空機では,軽量化の為に水冷機能をなくし,ジャケットのみを放熱用に残したものが多い。


キットについて
大昔のハセガワのキットで,スケールは1/8。同時期に販売されていたミュージアムモデルの1/8のソッピース・キャメル用のものに,額枠を追加して単品キットにしたもの。たまたまヤフオクで1200円ほどの即決価格で出ていたので購入。年季の入って箱だ。

ミュージアムモデルの1/8シリーズには,キャメル,フォッカーDR.I,SE.5aがあった。ホワイトメタル,木,プラスティックなどの複合素材で構造が精密に再現されている。DR.Iのみ手持ちであるが,制作中もその後も置き場所が問題で,手付かずである。制作自体は,ラジコンのバルサキットの機体を作っていた人には全く問題はないレベルだ。被服のないスケルトン(骨格)モデルなので塗装の手間がない分楽だろう。


制作について  (制作2011年小満)
写真にもある通り,パーツはほんの数点で,塗装も含めて数時間で完成する。昔なら苦労しそうな塗装も,現在は大変質感に優れたメタル系塗料があるので手軽に高質感のものが完成する。

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● クレルジェ 9B Clerget  ●
実機について
1913年にフランスのクレルジェ社によって開発された9気筒空冷130hpロータリーエンジン。イギリスで多くライセンス生産され,ソッピース社の機体に多く採用された。キャメルにはロングストロークバージョンの9Bfが搭載されていた。

詳細はこちらのページを参照


キットについて
ハセガワ 1/8
もう30年も前になるだろうか。ハセガワはミュージアムモデルと銘打った1/8スケールの複合素材によるディスプレーキット3種を発売した。ソッピース・キャメルとフォッカーDR.Iとスパッドである。初期キットのエンジン部分はメタル製であったが,その後プラスティック化され,そのエンジンだけを販売したのがこのキットだ。

その後このキットは,所定販売数を完了してからは長らく絶版品となっていたが,2011年3月に再販された。箱のみ新しいデザインになったが,中身(金型)は従来のまま。年代を感じさせる「バリ」や「ヒケ」がそこそこあるキットだ。なぜかプラスティックが異様に硬い。昔のタミヤやハセガワのキットのプラスティックは硬かったように記憶しているが,最近は柔らかめの海外のキットをよく作るせいが,異様に硬く感じる。

製品化の経緯を考えると仕方がないが,1/8というのは少々大き過ぎる気がする。ローデンから1/32のエンジンだけのキットも出ているが,これは少々小さい。1/16位が個人的には嬉しかったが。また,同シリーズのフォッカー用のル・ローヌ(オーベル・ウーゼル)エンジンも同様に発売されたが,今回は再販されなかったのが残念だ。再販の主なターゲットは複葉機ファンではなく,パーツ転用しているらしいマシーネン・クリーガーのファンのようであるので仕方がないのかも知れない。


制作について  (制作2011年原発事故頃)
若干のヒケ処理は問題ないが,素材が硬いのでランナーから外した後の処理が大変だった。複葉機制作の息抜きと思って手を着けたが,細かい同じ部品が山ほどあるので途中でうんざりしてきた。息抜きなどとなめて掛かったのが間違いだった。後部のギアーが見えるように「軽い」カットモデルとした。今回は追加はしなかったが,プロペラの根元モデル(専門的には何と言うのか知らない)も付属していればなお良かった。

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