Hanriot HD.2

● Hanriot HD.2 (アンリオ HD.2) ●

実機について
【アンリオ社】
1904年に自動車レースで128km/hの世界速度記録をマークしたフランスの「ルネ・アンリオ(Rene Hanriot)」は,1908年になると,前年に航空機の製造を始めていたフランスのアントワネット社(Societe des avions et moteurs Antoinette 1907年~1911年)に,自身用の単葉機1機を発注したものの納品されず,自身で製作すべく,1909年に航空機メーカーの初代アンリオ社(Hanriot)を創設した。

アンリオは1909年から9012までにアンリオI型からIV型までを製造したが,経営不振により,経営権はアルフレッド・パイオニア(Alfred Ponnier)に移り,社名もCMNAと改名される。第1次大戦開戦後,所在地と社名を変更し,「アンリオ航空会社(Aeroplanes Hanriot et Cie )」として当初は英国のソッピース・ストラッター1-1/2のライセンス生産を行っていたが,1915年になると,設計者にピエール・デュポン(Pierre Dupont)を向かい入れ,彼の設計によりアンリオ HD.1が製造された。 1次大戦後も合併・吸収などを繰り返しながら,航空機メーカーとして存在し,1936年のフランス航空機メーカーの国有化に合わせ,SNCACとなる。

【アンリオ HD.1とHD.2】
オリジナル設計とは言え,その形状はソッピース社の特徴を有しており,例えば,胴体部の上翼支柱の形状はソッピース・ストラッター1 1/2同様にW型をしている。また全体の姿も,後年のキャメルやスナイプのような形状に近い。 上記のW型支柱と上翼にのみ付けられた上反角が,この機体の特徴である。エンジンは当時では標準的なローターリー式のル・ローヌ9J 110馬力を搭載してた。飛行性能を上げる為の軽量化として,通常はビッカース機銃は1丁のみを機首部に搭載したが,機体によっては2丁積んだものもあった。2丁としたのは,当時のビッカース機銃に故障が多かった為だ。

また,標準では機銃は中央ではなく片側(左側)にオフセットされていたが,これもベルギー・イタリアで採用された機体は,中央に設置し直し直されていた。オフセットの理由は,着陸時の転倒で,パイロットが機銃に激突するのを避ける為であった。 この機体は実に1200機製造され,後継機のHD.2,3を合わせると5000機を上回る機体を製造した。フランス軍には,ニューポール17の後継としてスパッド7が既に制式採用されていたので,アンリオ機は主にベルギーやイタリアに輸出され,軍用機として採用された。

ベルギー空軍のトップエースであるウィリー・コッペンは35機の撃墜記録を持つが,その内の32機がル・プリエールロケット弾を使用した観測気球の撃墜であった。静止した状態の気球への攻撃は簡単に思われるが,実際には,気球や,気球下の地上からの一斉射撃を受けるので,その任務は非常に危険を伴うものであった。 また,海軍仕様として,垂直尾翼をウチワ状の形状とし面積を大きくし,フロートを装着したHD.2も製造され,フランス海軍や一部はアメリカ海軍でも使用された。



・翼幅:8.70 m
・全長:5.85 m
・全高:2.94 m
・空虚重量:407 kg
・全備重量:605 kg
・発動機:ル・ローヌ 9J 110馬力
・最高速度:184 km/h
・航続距離:550 km
・飛行上限高度:6400 m
・上昇率:2000m/5.1分
・武装:ヴィッカース機関銃 ×1 または 2 (気球・飛行船攻撃用のル・プリエールロケット弾×8)
・製造数:約1200機(内831機はイタリアでのライセンス生産)






キットについて
バロムが2014年頃から数機をリリースしている。食玩ブームの頃,対象となる2次大戦機がネタ切れになると,2~3種の複葉機が食玩メーカーからリリースされたが,出来が悪く,流行らなかった。1/144は,海外のレジンキットでは見られるが,それ以外では初めてと言える。キットは2個一で,エッチングと4種のデカールが入っている。エッチングは厚みがあって非常に良い。デカールも極薄だが,白抜けなどがなく,密着性も良い。本体モールドは大したものではないが,合いも悪くはないが,修正は必要。特に支柱の位置は,キットには取り付け穴があるものの正確ではなく修正が必要な場合がある。


制作について
キットはHD.1であるので,フロートとその支柱,さらに特徴的なウチワのような垂直尾翼をスクラッチした。当然HD.2のデカールは付属しないので,付属デカールを適当に使用した。ラウンデルは珍しいベルギー国籍。HD.1同様に,ダブルに張られたフライイングワイアーは面倒臭い。(制作:2016年10月)















プラモデルのトップへ戻る