フォッカー・アインデッカー ● フォッカー・アインデッカー Fokker E.III ●
実機について
初期の自動車が内燃機関ではなく電動として開発されたのと同様に,初期の航空機の多くは実は複葉ではなく単葉であった。1914年の1次大戦開戦時から,モランソルニエのタイプL,タイプNを最初に起用したフランスにほぼ1年遅れて,ドイツでは1915年半ば過ぎになってようやくこのアインデッカーを登用することになった。
アイデンカーとは,「Eindecker」つまり「単葉」という意味で,識別イニシャルの「E」はそれを取ったものだ。1次大戦後期になると,フォッカーが同じ単葉(パラソルタイプ)のD.8を開発するが,その時点では既に識別イニシャルは改定されており,単座戦闘機はすべて「D」のイニシャルが振分けられた。よって,アインデッカーの愛称で呼ばれるのはこの機体だけであると考えればよいだろう。

Anthony Fokker(ジャンプ先左フレーム上から2番目のメニューから入る)は,木製構造の胴体を持つモランソルニエ機をベースに,素材を鋼管化したM.5を設計する。この胴体の骨組みに鋼管パイプを使用する設計は,後の全てのフォッカー機に共通する構造である。
「M.5(Gnome Lambda 7気筒80Hp搭載)」には翼幅の広い「M.5L」と狭い「M.5K」とがあった。ドイツ軍は「M.5L」を軍用機として「Halberstadt(ハルバーシュタッド)」社に製造させ,A.IIと言う呼称を与え,一方,複座機のM.8は,軍用機としてフォッカーで製造されることとなり,A.1と称された。両機は共に,1次大戦初期の西部・東部戦線に配備された。1915年になると,「Stangensteuerung(シュタンゲンシュトイエルング)」と呼ばれるカム・ロッドを使った同調機(ジャンプ先左フレーム中程の■ 火器・武装 ■ メニューから入る)を装備したパラベラムMG14が1丁装備されたA.III型が追加発注され,その後,量産されるようになった機体はE.Iと呼ばれるようになった。この同調機銃を装備したアインデッカーの登場で,1915年半ばには,有名な「フォッカーの懲罰」の時代を迎え,約半年の間,前線付近の制空権はドイツが握ることとなるが,デ・ハビランド設計の新鋭機「DH.2」の登場により一方的な優位性は失われてしまう。

トニー・フォッカーによって設計・制作された最初の軍用機であるEシリーズ・アインデッカーは,1型から4型まで発展する。1型は「M.5k」に7.92mm機銃を取り付けただけのものであった。
2型では機銃の装備を前提とした設計がなされ,エンジンのパワーアップと機体の大型化がなされている。
3型では翼弦が8cm程縮められ,燃料タンクを大型化することで航続時間が2型より1時間長い2時間半に伸びている。また当初は機銃が1丁だけ装備されていた。
4型は,エンジンを160hpの2列ロータリーに換装,機体もひと回り大型化することで,3丁の前方機銃の装備を目論んだが,プロペラとの同調が上手く行かず,後に2丁に戻された。機銃数を増やそうとしたのは,当時の機銃がよく弾詰りしたせいで,その故障をカバーする為であった。その「E.IV」の失敗を受けて,「E.III」に後付で機銃を2丁に増やした「E.IIIs」が誕生することになった。
このように,「E.IV」ではエンジン部が異るが,全型を通して外見上の大きな違いはない。1型は僅かに54機,2型は49機,3型が最も多く249機,4型は49機が製造されている。エルロンを持たない捻り翼の機体は間もなく旧式化し,徐々にアルバトロスD.IやD.IIへと移行,1916年には前線を去ることとなる。また,アインデッカーは同じ名称で「Pfalz(ファルツ)」社でも製造されている。

【E-I】
緒元等
翼長:8.85m
全長:7.22m
空虚重量:360kg
最大重量:563kg
最高速度:130km/h
最高高度:3000m
航続距離:200km
上昇率:2000m/20mins
火器:Spandau IMG08(またはParabellum MG14) 7.92mm×1
発動機:Oberursel U.0 7気筒80hp (Gnome Lambda 80hpのコピー。オーバーウーゼルのイニシャルは,「U」がグノームのコピーで,「Ur」はル・ローヌのコピーを意味する)


【E-II】
緒元等
翼長:9.7m
全長:7.2m
空虚重量:340kg
最大重量:500kg
最高速度:140km/h
最高高度:-
航続距離:-
上昇率:-
火器:Spandau MG08 7.92mm×1
発動機:Oberursel U.I 9気筒100hp


【E-III】
緒元等
翼長:9.52m
全長:7.2m
空虚重量:399kg
最大重量:610kg
最高速度:140km/h
最高高度:3600m
航続距離:1.5h
上昇率:1000m/5min, 3000m/30min
火器:Spandau LMG08*15 7.92mm×1(E.III=×2)
発動機:Oberursel U.I 9気筒100hp


【E-IV】
緒元等
翼長:10.0m
全長:7.5m
空虚重量:466kg
最大重量:724kg
最高速度:170km/h
最高高度:3960m
航続距離:240km
上昇率:-
火器:Spandau LMG08 7.92mm×3(2)
発動機:Oberursel U.III(Gnome 14気筒 Lambda Lambda160hpのコピー)



キットについて
ウイングナット・ウイングズ

予告からほぼ1年を経て,発売された新キットである。歴史的に関係深い「エアコ DH.2」との抱き合わせキットとなっており,デカールを1種に絞り,箱も1個に節約したせいで,別々に買うより10ドルばかり安い。

エンジンのシリンダーの接着面の処理の難しさは「DH.2」と同じで苦労する。あまり宜しくない。また,単葉のクセに張線が多く,今回の図面では位置がわかりにくく苦労した。


制作について  (制作2012年小雪)
というようなことで,この機体もエンジン部に楽しくない苦労を強いられたが,ウイングナットのキットで初めて,ホイールが3分割パーツになっていた。これは嬉しいことである。裏表のホイールカバーとタイヤ+リムに分かれていたのである。

なぜ喜んだか。スポーク張りを再現し易いからだ。手を入れ易いと言ってもかなり厄介な作業ではあるのだが。72や48スケールのエッチングのスポークは手元にもあるが,32は手持ちがなく,更にエッチングの薄さもさることながら,エッチングの再現はスポーク組になっていないので,迷わずスポークを作ることになる。0.2mmの洋白線を使うことにした。ハブを作り,リムにも孔を開ける。
しかし,エンジンの合いの調整と違って楽しい苦労なので,ヤル気マンマン(小俣さん,どうしてるかなぁ)で挑む。その割には,スポーク数を最低の16本組みとしてしまったが,まぁ,いいだろう。実機の場合,国籍や機体によってスポーク本数は色々である。だからパパも言っているように「これでいいのだ!」 まぁまぁ雰囲気は味わえる仕上がりになっただろう。

リギングは,先に書いた通り,張り方の理解にやや苦労した。今回は特に強度が必要な部分がなかったので,全てをEZラインで張った。お陰で後々の扱いに気を使う必要がなく,リギングが多い割には触り易い模型となった。

塗装は地味だが,結構いい雰囲気だ。生成りの色よりもいいかも知れない。エンジンカウル付近の金属部は,毛虫状の模様が入っていて,これがなかなか良い感じで機体を引き立てている。私はエンジンやカウルのようなアルミ部には,メタルクラッド系の塗料に,強めの艶消しをコートする。その色相が非常に気に入っている。その上に,シルバーグレーで模様を描いた。全体としては,主翼中心部,つまり,コクピットからカウリングエンジン,脚周りが結構見栄えがするいい模型に仕上がったと思う。机に置いた際に翼に下半角が付いているように見えるが,実機もこのようになっていたようだ。しかし,これは下半角ではなく,「たわみ」だろう。飛行するとシャンとなり,逆に若干の上半角が付くまで持ち上がるのだと思う。


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