● RAF  R.E.8 「ハリー・テイト」 RAF R.E.8 "Harry Tate" ●
実機について
1913年までは,英国の王立航空工廠で設計製造された機体は「F.E.(Farman Experimental=ファルマン実験機→プッシャータイプ)」,「B.E.(Bleriot Experimental=ブレリオ実験機→トラクタータイプ)」,「S.E.(Santos Experimental=サントス実験機→カナードタイプ) 」の3種に分類されていた。これらはどれもオリジナルの設計者名を取ったものであるが,当時の最も信頼出来る設計者の機体を選んだ英国軍の視点の鋭さは流石である。

その後,機体の分類(イニシャル名)は次のように変更された。
「A.E.」=Armed or Armoured Experimental=Farnborough Ram(3機)
「C.E.」=Coastal Experimental (2機のみ)
「F.E.」= Fighting experimental (プッシャータイプの機体にはファルマン・エクスペリメンタルという名称が残された)
「N.E.」=Night Experimental (1機のみ)
「R.E.」= Reconnaissance experimental (複座機)
「S.E.」=Scout experimental (単座機)

なお,注釈にもあるように,「A.E」・「C.E.」・「N.E.」は試作機として1〜3機ずつしか製造されなかった。また「R.T.」や「T.E.」もワンオフの機体に使われていた。こんな事情から,実戦配備されたのは模型にもなっている「B.E.」・「F.E.」・「R.E」・「S.E.」の4種と考えればよいだろう。勿論,各イニシャルの後には発展に応じてタイプ番号が付くので,機種数とすれば数十に及ぶ。

一方,RAFはエンジンの開発も行なっており,1次大戦終結までにRAF1〜5までが作られた。
RAF1は1913年に完成した空冷V8の7〜80馬力のエンジンで,B.E.2やDH6に採用された。
RAF2は空冷星型9気筒120馬力のエンジンでB.E.8に搭載された。
RAF3は1914年完成の液冷V12気筒の200馬力で,R.E.7などに搭載され,ボアアップ版のRAF3aでは出力は260馬力に向上している。シリーズで300個弱製造された。
RAF4は空冷の∨12気筒エンジンで,140馬力の基本型のファーストランが1914年,1917年開発の4a型が160馬力で,3600個以上が量産され,主にR.E.8に搭載された。また,4d型が180馬力,4e型は240馬力を得ているが量産には至っていない。
RAF5は1915年に完成。RAF4にプッシャー用にクーリングファンが追加されたタイプで150馬力,ボアアップ版の5bで170馬力となっている。FE2やFE4(2機のみ製造)に搭載された。

前説が長くなったが,今回の機体は,ハリー・テイト(Harry Tate)の愛称で呼ばれたR.E.8である。 この機体はB.E.シリーズの後継の複座機として1915年終わりには設計が終了し,1916年の8月から1918年終わりに掛けて約4100機(修復機含む)が製造された。

ハリー・テイトとは英国の舞台や映画のコメディアンの名前であるらしい。1895年にデビューし,1930年代に人気をはくした芸人で,ハリー・テイトという言葉自体が20世紀の英語スラングになっているが,その意味は「素人」とか「役立たず者」という意味で使われたらしい。1次大戦前は下手な芸だったのだろうか。運動性が低く,敵機の餌食となることが多かったこの機体への当て付けのニックネームだったのだろう。

エンジンは空冷∨12気筒150(160)馬力のRAF4aが搭載されている。空冷ということで当然だろうが,同じ∨12気筒でもブリストルファイターなどに搭載されていたロールスロイスのファルコン3などと比べると非常に簡単で原始的な構造に見える。

機体の特徴としては,1葉半とまではいかないまでも下翼がかなり小さく,更にはこの時期の複葉機には珍しく,スタッガーになっている。これは飛行性能の向上というよりは,上方視界を確保する為だろうが,お陰で翼間支柱がすべて前傾しているので,実際はどうであったかは分からないが,強度的に弱そうに見える。

また,煙突のように上に突き出た2本の排気管とエンジン中央上部のラッパのようなエアインテークカバーも面白い。また,機体を真横から見ると,下翼辺りからエンジン先端に掛けて反り上がったようなカウリンが付いているのも特徴のひとつと言えるだろう。更に上翼の上面に吊り橋のような支柱とワイヤーで補強されているのも個性的だ。


主な緒元
・全長:8.5m
・翼幅:13.0m
・最大重量:1,301kg
・エンジン:RAF4a 空冷V12気筒 150馬力
・武装: Vickers .303(7.7mm)×1, Lewis .303(7.7mm)×1〜2, 118kg(260lb)までの爆装
・最高速:158km/h
・上昇限度:3,353m


キットについて
ウイングナット・ウイングズ

他の複座の英国機も内部はごちゃごちゃとしていて模型ばえするのだが,このキットは特に念入りに再現されている。これはスタッガーがついているせいでコクピット内部が外から見えやすいせいだと思われる。いつものウイングナットのレベルで,特にキットとして問題はないようだ。


制作について  (制作2012年立夏)
ダイムラー製造,3 Sqn AFC所属, 識別番号:B3420 "K"

以前に制作したSE5と同様に,オーストラリアから派遣されたカンガルー部隊として制作した。今回は,機体形状がよくわかるようにカウリングは装着状態で固定した。また,スタッガーのせいで外部から比較的よく見えるコクピット内部はかなり手を入れて作りこんだが,やはりカットモデルとしてもろに見せても遜色ないまでに作り込めるので,もう1機,カウリングレスで胴体の一部をカットしたものを作る予定だ。

機体の制作に当っては特に問題はなかったが,張線が本数の割にいレギュラーな取り回しとなっており,少々困惑した。素材はいつも通り,テンションを掛けl場所は伸ばしランナー,機体からはみ出している部分と動翼リンケージはEZラインを使っている。個人的好みで,強度用リギングはシルバー系に,コントロールリンケージはチャコールのままの無塗装としてある。ターンバックルの部分のみ黒で塗装してある。このEZラインはうっかり指を引っ掛けても平気なので重宝するのだが,反面ゴム素材なので伸び縮みする度に塗装がすぐに剥がれてしまうのが厄介だ。

爆装は見た目を重視してフル装備とした。このちっこい爆弾(20ポンド)を8個作るのは結構な手間だ。とりわけ緑と赤のリングの位置と幅をなるべく揃えて描くのが面倒臭く時間も掛かる。

塗装は相変わらずの単色なのである。写真では判りにくいが,今回は様々な色相で複雑なグラデーションにしてみた。そんな中にあって,幅広の4翅のプロペラの質感はなかなか上手く仕上がったと思っている。木目の表現は,面相筆で書き込んだり,ドライブラシを使ったり,サンドペーパー等で傷を入れたり,またはそれらを併用する訳だが,仕上げは若干光沢を強めた半光沢とするか,若干艶を落した半光沢とするか,いつも悩む。

実物のニス仕上げの木部はかなり光沢があるのでそのイメージで模型も塗るのだが,やはりスケール感を考慮して「らしさ」を強調すると,いわゆる半光沢よりもやや艶を落した方がそれらしく見えるように思う。まぁ,何機も作っている訳なので,幾らそれらしいからといって毎回同じ仕上げでは作っている方が楽しくないので,その時々で色々あってもよいだろうと思っている。それより何機作っても上達しないのは何故なのだろうか。技術の問題よりも性格の問題なのだろな,きっと。



 ギャラリー1

 ギャラリー2

 ギャラリー3

 ギャラリー4

 ギャラリー5

 ギャラリー6

 ギャラリー7

 ギャラリー8

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