Lloyd C.V
● Lloyd C.V ロイド C.5 ●

実機について
オーストリア=ハンガリー(Austria-Hungary)帝国のロイド(Lloyd)社で開発された機体。独特の配置の翼下支柱を持つ機体で,主翼も合板のフルプランクという珍しい構図であった。また,湾曲した主翼の形状,垂直尾翼に被さるラダーの形状が雄鶏のようであるところから,「Kikeriki (Cock-a-doodle-doo)=コケコッコー」と言うニックネームが付けられた。戦時中にあって,まるで空に夢を追い求めていた黎明期の飛行機のような優雅なデザインと,高級家具や弦楽器のような仕上がりの非常に美しい機体である。反面,その独特の合板主翼構造から,前線での修理が難し点や,湿気に弱いなどの弱点があった。1917年中,「アウストロ・ロダイムラー(Austro-Daimler)」製エンジンが搭載された96機,ベンツ製エンジンを搭載した「WKF(Wiener Karosserie- und Flugzeugfabrik)」製造の48機が製造された。

K.u.K. Luftfahrtruppen (Kaiserliche und Konigliche Luftfahrtruppen)=オーストリア=ハンガリー帝国軍航空隊に就役したが,最前線で使われることは少なく,後に前線以外の任務で使用されるようになった。しかしながら,戦後もポーランドやハンガリー,ウクライナなどで使われ,ポーランドでは,「Fornir (Veneer)=ベニア板」というニックネームで呼ばれ,1924年まで使われた。


基本性能と緒元
・翼  幅:11.00m
・全  長:6.85m
・空虚重量:820kg
・全備重量:1,200kg
・最高速度:178km/h
・上昇限度:5,000m
・航続距離:250km (1時間43分)
・上昇率 :3.9 m/s (770 ft/min)
・エンジン:Austro-Daimler製 Hiero 185 hp 水冷直列6気筒
・武  装:trainable 8 mm Schwarzlose machine gun, fixed, forward-firing 8 mm Schwarzlose machine gun in overwing Type II VK gunpod ・爆装:90kg (200 lb)


キットについて
スペシャル・ホビーの1/48キットである。スペシャル・ホビーは,スペシャル・ネイビー・アズールなど多くのブランドを持つチェコのMPMのメーカー。

私の記憶によると,2000年頃に発売されたキットで,レジンパーツやエッチングが併用された完全な簡易インジェクションであり,モールドや精度は期待出来るものではない。デカールの質は悪くなく,白の抜けも少なく,糊や硬さも扱い易いものである。組み立て図はいかにも一世代昔の感じで,慣れていないとやや手強いかも知れない。また,エッチングはスケールの割に薄すぎる。しかしながら,他のプラキットは出ていない機体であり,それがスペシャル・ホビーの魅力なのであるが,その存在意義は小さくはない。


制作について (2016.10)


数年振りの1/48だ。複座機であるせいで,スケールの割にそこそこ大きい。上にも書いたように,キットには色々と問題がある。特に,脚部や翼部の支柱は長さがいい加減で,作り直しようやく形になった。また,実機は上翼が1枚ものではなく,左右の翼が中央部で繋がっているのだが,キットは1枚ものでインジェクションされており,制作時に切断するようにとなっているが,今回はそのまま組んだ。また,エンジンも通常は最上部のカウリングは取り外されているようだが,今回は完全にカバーしたので,エンジンは全く見えない。

塗装に関しては,感銘を受けた往年のスクラッチ・モデラーの作を真似て仕上げたが,家具というよりはチェス盤のようになってしまった。老眼になると遠近だけではなく,コントラストや彩度の微妙な差が判らなくなり,ついつい大きな差をつけてしまう。その結果がこれだ。本来は各マスはもっと似たトーンに仕上げるつもりだった。

実はこのキットは,十数年前に着手し,半分程進めたところで放置してあったものを引っ張り出して仕上げたものであるので,不満点が多かったが,途中から修正するのは厳しいので,その流れで完成させたものだ。細部に関しては,エンジンがないので手が掛かるところは少ないので,見せ場として他社のエッチング・スポークホイールを使用した。エッチングのスポーク・ホイールはリム部の処理に困る。というのも,ホイールはハブを頂点にした傘状をしているが,リムがそのままだとその形状には出来ない。なので,リムを途中で何箇所か切断して円錐状にするか,リム部を一度完全に切り取ってしまうしかない。今回は後者にした。

本来は,左右のスポークはハブ中央部にほぼ1直線に並ぶのだが,今回は中央からやや左右に分かれてしまった。スポークを取り付けただけで違和感があるので,銅線でリングを作りはめ込んでみた。ギャラリー4の写真参照。

アネモメーターやマシンガンの出来はあまり良くなかったがそのまま仕上げた。また,ラジエターホースはキットのレジンパーツをやめ,真鍮線で簡易的に制作した。なお,上翼上面に取り付ける補助タンクとガンポッドがパーツとして付属しているが,今回はタンクとした。前出のスクラッチビルダーの作品ではガンポッドになっており,この機番の機体にもガンポッドの方が装備されているという資料と,タンクだったという見解があって,その辺りは好みとした。当時の写真を見ると,この機種には間違いなくどちらかが付いている。私はあまりそういった特定の機番をその通り組み立てるつもりはなく,機種全体の特徴が最も現れる装備で仕上げるようにしているので,大きな問題ではない。

いつもはデカールは使用せず,基本的に手描きでマーキングするが,今回はすべてデカールを使った。やはりデカールは時間的に早いし,シャープに仕上がる。今後は使いやすく質が良いデカールなら,デカール仕上げも悪くない気がする。また,木目はスケールの割に「粗」だったかも知れない。それにしても美しい機体である。既に絶版キットではあるが,好きな機体なので後2キットあるので,これらはじっくり仕上げよう。

Gallery 1
 
Gallery 2
 
Gallery 3
 
Gallery 4
 

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