SSW D.III ● ジーメンス・シュッケルトD.III エデュアルド●

実機について
エルンスト・ウーデッドは,身長160cmにも満たない小柄な体であった。倍率が高くなかなか陸軍の飛行学校への入学が認められなかった彼は,民間パイロットの免許を取ることでようやく陸軍への入隊を許され,その後,複数の航空部隊を転任する間に自身が撃墜されることもあったが,第一次大戦中に62機の撃墜を記録した。終戦後にはアクロバット・パイロットをしていたが,第二次大戦の勃発に伴い空軍大将として新航空機開発を全任された。しかしながら大戦中にその重圧の為に自殺したとされている。
この個体はヤスタ4に所属の中尉時代の彼の搭乗機で,側面に記載された「Lo」というのは婚約者のイニシャルだ。彼は,「アルバトロスD.V」や「フォッカーD.VII」や「フォッカーDr.I」等に乗り換えた折にも同様に書き込んでいる。

この機体の特徴は,なんと言ってもずんぐりした胴体と,当時では珍しい4枚ペラ,さらに3型のこの機種のスピナーにある空気取り入れ口だ。3型でも穴のない機体もある。シュッケルトにはこの3型以外にも,2型・4型等のバリエーションがあり,機体サイズや尾翼形状等に違いがある。翌年には腹の下に落下式燃料タンクを装備した単葉(パラソル翼)のD−6型のプロトタイプが2機製造された。大戦末期の1918年から主に迎撃機として実践配備された。この機体は上昇能力に秀でており,高度5000m到達時間は13分と当時の他機の半分以下であった。

上翼スパン:840cm
下翼スパン:813cm
全長:585cm
乾燥重量:534kg
最高速:180km/h
実用高度:8000m
航続距離:360km
武装:MG08/15 7.92mm機銃 
エンジン:Siemens Halske ShIII 160hp


キットについて
1/48の複葉機といえば,何を置いてもチェコのエデュアルド社だ。この機体はこの会社初の一次大戦機のキットである。AFVや第2次大戦機・現用機ファンにはエッチングパーツメーカーとして名高い会社だ。当初はガレージメーカーとして簡易インジェクションモデルを製造していたが,現在ではボヘミアンガラスの職人気質に加え,工科大学の研究グループとの産学協同で金型の研究開発を進めることでタミヤやハセガワに勝るとも劣らないキットを産出している。
同社の一番の魅力は,マイナーな機体の商品化にあると言える。特に初期のキットには,このジーメンス・シュッケルトD.IIIを初め,アルバトロスC.III,ハンザ・ブランデンブルグD.I,アルバトロスDr.I,ソッピース・トリプレーンなど,大変に興味深い機体の商品化を行っている。
尤も,当時のエデュアルドの射出技術はまだ不完全なもので,モールド,ディテール,部品の合い具合等に問題があったが,形状等の考証は他のガレージメーカーとは雲泥の差で,今でも通用する。

上に挙げたの初期シリーズのキットは発売から既に20年近く経っており,現在は欠品扱いとなっているが,事実上は製造中止の廃版だ。倒産・廃業した模型屋の蔵に眠っているか,まれにネット・オークションで見かける程度で,元々の輸入量自体が少ないせいで,現在入手することは極めて困難だ。出来れば新金型での再販か,それが不能なら旧金型でもよいのでとりあえず再販してもらえると有難い。

現在のエデュアルドのキットはその再現性の高さから一級品と言える。ただ,プラスティック原料の高騰なのか金型製造のコストなのか,はたまた代理店のピンハネが大きいのか,最近のエデュアルドの複葉機キットは値段がベラボウに高い。ちょっと余分に2個買っておこうかと思える価格ではない。
一方で,同一機体を2個イチにしたデュアル・コンボという形の商品や,エッチング・パーツを省いくことで価格を大幅に抑えたウィークエンド・エディションも販売されている。2個買っておきたい人にはデュアル・コンボでコストが下がるものならそれなりの意味はあるが,やはり一次大戦機の場合にはオープン・コクピット内部や機銃などを細部までシャープに再現できるエッチングなしのキットは魅力が大きく損なわれる。

エッチング・パーツを使った組み立てというのはことのほか手間が掛かる。1/350や1/700の軍艦をコテコテのエッチング・パーツ漬で完成させている作を最近はよく見かけるが,ひたすら関心するばかりだ。タミヤやハセガワは,部品数を極力減らしつつ細部の再現を追求することで,誰もがある程度均一な仕上がりを実現出来るキットを目指しているのに対し,エデュアルドやウクライナのローデンは,相変わらず部品数は多い。特にローデンの最近のインジェクションのパーツの細かさといったらランナー越しに眺めるだけで目的を果たさんがごとくシャープで美しい。反面,1/48の複葉機となるとその部品点数の多さにたじろいでしまう。いざ,ランナーから切り取ろうとすると必ず数個は破損してしまう。

数年前に,ファインモールドだかどこかがインジェクション・パーツの細かさの極限に挑戦する軍艦の機銃を製造したことで話題になっていたが,それに迫る勢いの細かさである。それはそれで楽しいのだが,それら無数のパーツの取り付け位置がマークされていないし,組み立て図にも適当な表記しかない点がローデン・キットの悩みの種だ。


制作について (2010.5)
上記の駄文の通り,初期のエデュアルドのキットはICMやローデン程ではないにせよ,組み立てが容易ではない。特にエッチング・パーツの組み立ては,難しいというよりは大変な手間である。また,エッチング・パーツは当然ながら厚みがない2次元的なものば多い。一部は,折ることで立体的にするようになっているパーツもあるが,それでもそのままでは不満が残るパーツも少なくない。

今回の制作に当たっては,そういうパーツは,エッチングの裏にプラ板やプラ棒を付けることで厚みを出したりしてある。特にこだわったのは,張線の部分だ。このくらいのスケールになると,ターンバックル部の再現もしてみたい。今回は金属線とプラ糸のハイブリッドで挑戦してみた。なんとなく雰囲気が出ていると自己満足している。各開口部の穴あけや,翼後縁部を薄削化などはわざわざ記載する必要はないと思う。動翼のヒンジやエッチング製ハッチのヒンジは自作しておいた。一番残念なのは特徴であるスピナーの空気取り入れ口の形状がはっきりと確認出来なかったことだ。数枚の写真で確認したが,4個の口の開度はそれぞれ異なるように見える。次作までの課題だ。

次は塗装だ。一次大戦機の魅力のひとつがそのカラーリングやマーキングである。お絵かきキャンバスか絵具パレットのようなそれらは見ていると楽しいものだ。が,それを塗るとなるとその大変さに夢から覚める思いになる。現在はPCの進化によりステッカー紙などへのデカールを転写することでマスキングが作れるようになった。プロッターを使えば自動切抜きも不可能ではないが,解像度の問題や,作るマスキングの枚数が少ないということもあるので,手で切り抜く方法てもなんと対処できる。

今回はイラストのマーキングはないが,5色ローゼンジーの迷彩がある。ステッカー紙を使ってマスキングを作り,エアブラシと筆で塗った。時間は掛かるが,ローゼンジーのデカールを翼全面に貼ることを思えばよほど手間がない,と思う。この手の機体を作るモデラーは必ずと言ってよいほどローゼンジーは塗りのようだ。当時物の古いデカールは水に漬けるとバラバラに壊れ使い物にならないことが多いので,選択の余地はないのだが。

リブ位置の調整をしなかったこともあるが,ズボラな性格も相まって,リブテープの塗り位置に問題があるのはご愛嬌ということで勘弁してもらおう。

ステッカー紙は強力接着タイプと再剥離タイプがあるが,強力タイプだと漏れが殆どなくシャープに仕上がるが,各翼の各面ごとに版を作らないといけない。再剥離タイプは2〜3度使い廻しが不可能ではないが,接着力が弱い分,かなりの漏れがあり却下。いずれにしても5色ローゼンジーの場合には最低4枚の版が必要となるが,トンボ(合わせマーク)などで位置合わせをしても,どうしても版のズレが出てしまう。
今回はちょうどいいデカールが無かったので,他のキットのものをスキャンし,その一部を画像編集ソフトで切り貼りし,必要面積分を作ったのだが,仕上がりを急ぐがゆえに原版自体がやや正確さを欠くものだった。もう少しじっくりとデーターを作ればもっと綺麗なマスキングが出来るだろう。

ローゼンジーは一般的な迷彩よりも仕上がったときの見栄えはいいので,今後もローゼンジーの採用はあると思うので,次回はもっと正確なものにすることが出来るだろう。一方,ローゼンジーの色合いに関しては正直なところ正確なところが分からない。2〜3冊の資料本と最新の模型キットのデカールしかデータがないので,今後も「なんとなく」の範囲を出ないと思われる。

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