GeeBee R1
● ジービーR1  GeeBee R1 ●
実機について
一連のジービーレーサーはマサチューセッツ州スプリングフィールドのグランビル・ブラザーズが経営する小さな航空機会社によって作られた。速度記録を更新する為に,彼らは出来る限り大きなエンジンと出来るだけ軽い機体との組み合わせることで実現しようとした。下の写真は,製造順である。

【モデルY】


【モデルZ】


【モデルR1】


【モデルR2】


【モデルR1/2(=R3)】


1932年9月3日,740馬力のP&Wエンジンを搭載したジービーR1は,473km/hを超える陸上機世界速度記録を樹立した。また,9月5日にはパイロンレースの最高峰トンプソン・トロフィー(Thompson Trophy race)でも優勝を手にする。また,クロスカントリー用エンジンを搭載したジービーR2は,トラブルを抱えつつ,長距離レースであるベンディックス・トロフィー(Bendix Trophy race)でゲールバックが(Lee Gehlbach)4位に入賞し,トンプソン・トロフィーでも5位に入賞し,ジービーレーサーは名声を手にした。

その特徴的な機体のスタイルは,素人が想像しても操縦の難しさを簡単に想像させるが,R-1のパイロットであったジミー・ドゥーリトル(Jimmy Doolittle)「指先に鉛筆を立てるような」と,その過敏な操縦性を語っている。それを証明するかのように,製作された機体の殆どが事故で失われ,パイロット達も命を落としている。GB-Zのページに事故の模様の動画があるので興味のある人には見ていただきたい。

【R1】








【R2】


【R1/2(R3)】





Zの墜落原因はフラッターと急舵と言われているが,キャノピー前方の燃料タンクのキャップが高速な気流によってもげてキャノピーを破りパイロットを直撃した為とも考えられた結果,R1ではキャノピー前面は防弾ガラスになり,かつタンクキャップは内蔵式にされた。また,風洞実験で,Zのような前後が直線的な胴体よりも,ビアダル型の形状の方が抗力が減少することが判明し採用された。結果太くなった胴体自体が揚力を発生するようになり,パイロンでのタイトターンが可能になったとも言われている。また,機体は12Gに耐える強度を有した。R1とR2とは外観は殆ど同じだがエンジンサイズが異なり,カウリングの絞り方(開口面積)が少し異なっている。

【Rシリーズのマイナーチェンジ】

●最初のR1の形状。垂直尾翼部がボブテイルになっている。1932.8.13.



●反動トルク対策で垂直尾翼面積の増加に伴う形状変更。1932.



●ラダー部の面積と形状が更に変更される。1933年Russell Boardmanが操縦中に墜落,パイロットは死亡。



●1932年,クロスカントリー用に設計されたR2。エンジンはZと同じP&WのR985(直径45-3/4"=116.2cm)を搭載 



●ジービーシリーズ最後の【R1/R2(=R3)】型。R1とR2の残骸からパーツを集め制作された胴体が長いタイプ。ロイマイナー操縦中に墜落するも,パイロットは軽傷で済んだ。




事故で失われたお陰で,現在オリジナルは現存せず,現在見られるのは復元・レプリカのみである。スタントパイロットのデルマー・ベンジャミンによって制作されたR2のレプリカが彼の操縦で,エアショーでデモ飛行が行われている。背面飛行や宙返りもこなしているところが凄い。
R-2のレプリカのエアロバティック飛行の様子の動画のダウンロードはこちら






・初飛行:1931年8月22日(製造1機)
・全長:5.38m(17 ft 8 in)
・翼幅:76.2m(25 ft)
・全高:2.48m(8 ft 2 in)
・空虚重量:835kg
・総重量:1,096kg
・エンジン:Pratt & Whitney Model-T3D1(R1340) "Wasp" Radial, 21860cc 730hp (2,300rpm) supercharged 直径50-5/8"(128.5cm)
・最高速:471km/h
・巡航速度:416km/h
・着陸速度:144km/h



レーサーも含め,両大戦間の民間機が1次大戦機と同等以上に好きなのであるのだが,多彩で面白い機体が多いにも関わらず,まともなキットが少ないのが残念である。そんな中にあって,出来はそこそこではあるが,ウイリアムズがインジェクションで何種類かのキットを出してくれているのは有り難い。特にジービーレーサーは好きな機体のひとつで,ラジコン時代には4st50エンジンクラスの機体を作ったことがある。

キットについて
ウイリアムズ・ブラザーズ(Williams Bros.Inc)
かなり古いキットであるが,最近再販されたようだ。作ったのは大昔のキットの方。本体は再販と変わらないはずだが,デカールの状態が異なる点が大きい。デカール自体は薄く,ノリシロも極細で高精細と言えるが,デカールは見てくれ以上に経年劣化しており,古いデカール定番の全体の黄ばみは元より,組立図に癒着していたようで,部分的に剥がれてなくなっている。キット自体は,いわゆる簡易インジェクションなのでモールドはダルいもので,各パーツもディテールが雑。「素材」と言った内容ではあるが,それでも各パーツの合いはそれほど悪くはない。ただし,キャノピーのサイズがやや大きいことと,脚の翼への取付部の形状が合いが悪いという欠点がある。

キットはR1とR2のコンパチとなっているが,実際には口径の違うカウリングパーツが2種類入っているだけで,エンジンは1個しか付属していない。なので,R2を真面目に作るには,Zに付属していたエンジンを載せるしかない。恐らくは,付属のエンジンではカウリング内部に緩衝するはずだ。いずれは,Rシリーズ3種を並べたいとは思ってはいるが,恐らく実現はしないだろう。


制作について  (制作2015年3月)
大きなカウリングは分割式ではなく1発抜きなので楽だ。翼やタイヤスパッツはズレがあり,いつもなら手を加えるが,今回は早く完成させるために無視した。素組の場合,キャノピーの透明度が低い点は,内部の再現を省略出来るので都合が良い。とにかく早く仕上げる為に一切のディテールアップを行わないどころか,数少ないパーツの一部を省略した。完全な素組な上に,充分なパーツ合わせも行っていない。デカールの状態が良ければ,更に早くシャープに仕上がっただろうが,デカールの欠けた部分をタッチアップしたりと時間が掛かった。今回もテカテカに仕上げた。精密プラモデルというよりは,デスクトップ・モデル風味に仕上がったが,思ったより感じよく仕上がったので結構気に入っている。となると,脚部とキャノピーの取付部の隙間くらいもっときちんと合わせてやれば良かったとちょっと後悔している。
雑に作ったので写真のアップには絶えないが,敢えて大きな画像をアップしてみた。






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