● ビーバー U-boot biber ●

実艇について


ドイツ最小の潜水艦である。いわゆるミゼットサブと呼ばれる特殊潜航艇であったが,目だった戦果は挙げられなかったようだ。

1944年の春に完成した後に,324隻が製造された。厚さ3mmの鋼板製の胴体は3ブロックに分かれており,艦橋部はアルミ製で窓には防弾ガラスが使用されていた。各動翼は木製であった。


また,トリム用タンクが装備されていなかった為,操縦性能が非常に低く,一定の深度,特に潜望鏡深度に艇を維持することが困難だった点が,戦果を挙げられなかった最大の理由と言われている。



海面を走行する際には,当時のオペル社の中型トラック,プリッツの32馬力エンジンを使用,また,潜行時には13馬力のモーターを使用した。


最初の実戦配備は1944年8月30日のフェカン港に於けるもので,22隻が出撃したが、湾外に出られたものは14隻、作戦海域に到達出来たのはわずか2隻にとどまった。。


その後も,オランダのアントウェルペン(アントワープ)のスヘルデ河口での作戦などに参加したが,大した戦果を挙げることもなく,出撃した20隻ほどの殆どが生還することはなかった。やはり設計上の問題,厳しい環境の北の海での運用,更には,操縦者のスキルの低さなどがこの潜航艇の失敗の原因であったようだ。


現在でも数隻が現存し,一隻は走行可能な状態に復元されているという。

@geni:GFDL CC-BY-SA CC4.0






緒元等
全長:8.9m
幅:1.6m
吃水:1.6m
排水量:5.7t
潜行深度: 20m
最高速度:海上 6.5knot(12km/h),海中 5.3knot(10km/h)
航続距離:180km(海上)
爆薬:T-IIIc魚雷×2
発動機:13hp 電動機および32hpオペル製エンジン
生産数:324隻





キットについて
イタレリ 1/35

イタレリのインジェクション+エッチングのキットで,現在でも入手は可能だ。右の写真は手持ちのカードモデル,つまりペーパークラフトなのだ。現時点では未制作ではあるが,これが大変良く出来ている。確かポーランドのメーカーでだったと思うが,ヘヒトやモルヒやゼーフントなどのミゼットサブもラインナップされている。それだけでなく,戦闘機や軍艦までが高品質でペーパーモデルキット化されている。プラモデルではないが,少々そそられるアイテムだ。


イタレリ2作目のミゼットサブキットだと思うが,先にリリースされているマイアーレ同様に1/35サイズだ。有名なミゼットサブには,モルヒ,ヘヒト,ネガーなどがあるが,バーリンデンの高価なレジンキットしか販売されていない。バーリンデンのキットは高価なだけでなく,出来がいまひとつなので購入を見合わせている

余談であるが,アイアンサイドというメーカーからインジェクションのネガーキットが発売されていたらしく,たまたま運よく入手出来た。ヘヒトやモルヒなどもイタレリのシリーズとしてインジェクションキットで発売してもらえると嬉しい。ブロンコモデルの1/35ゼーフントも手持ちにあるが,これは実艇が大きいのでコンパクトなジオラマには収まらない。ICMの1/72なら,この1/35のビーバーとほぼ同じサイズなので,ジオラマ化するならICMの方が適当だろう。飛行機キットもそうだが,ICMのキットは合いの問題など,作りにくいのであるが,モールドや全体の雰囲気が好きなメーカーである。

このキットには2体のフィギュアが付属しているが,あまり印象が良くない。シーン設定の関係もあって,よって今回のジオラマでは使用しなかった。潜水艦なので部品数は多くない。現在のAFVでは標準的かも知れないが,鉄板の溶接部のモールドなど表面モールドには好感が持てる出来だ。尾部の舵や,艦の横に走る魚雷取り付けレール部など細部の再現度も高い。

反面,司令塔内部の様子は,座席と計器板とハンドルのみであり,上部ハッチも開状態か閉状態のどちらかになる。よってその部分は改造することになる。また,パーツのズレや合いに少々問題があるので,素組みでも修正に時間が掛かる。また,T3c魚雷は,前期型と後期型が選べるようになっているが,違いは後部のみである。





制作について  (制作2011年白露)


折角魚雷が2種類選べるので,1本を旧型,もう1本を新型としてみた。外観部分は,各舵やプロペラの前後縁を整形する程度で,特に手を入れる必要もないような状態だ。

改造箇所@
なんといってもコックピット部のデイテールアップが必要だ。まずは操作盤全体を写真に基づきバルブ取手や配管などを巡らせ,深度計も自作した。写真にはないが,シート底部や側部を走る配管等の適宜追加した。




改造箇所A
4方の窓からも内部の様子を覗き見ることが出来るが,折角なので,ハッチからも覗けるように,真鍮線でヒンジを作り,ハッチを可動式に改造した。

改造箇所B
特徴的な船底形状が見えるようにする為と,ジオラマに展示する為に,左右の魚雷は脱着可能とした。これには現在では安価に入手出来るようになった超小型のネオジウム磁石を利用した。魚雷側に直径5mm厚さ1mmものを,また船体側には直径10mm厚さ1mmのものを埋め込んだ。これらは非常に小さなものだが,磁力が強いので,充分に保持出来る。1個5円から数十円で購入出来る。

本体に関しての改造はこの程度だ。塗装に関しては,実艇はクレーの単色のものが多かったようだが,今回のようなワカメ模様の迷彩のものも存在する。いずれ作ろうと思っているモルヒやヘヒトはクレーのみのようなので,今回は敢えてワカメ迷彩に挑戦した。

複葉機では4色や5色のローゼンジーという6角形を基本とする細かい迷彩を塗り分けて作っているが,このワカメ迷彩はパターンが不規則でかつ,全パーツを取り付けた後で塗装したせいもあって,塗り分けがことのほか大変だった。

ジオラマに入れ込むことを前提としているので,錆などの汚しを強めに入れた。パステルとパテにアクリルカラーを溶かし込んだものを使っている。巷で墨入れによく使われるエナメルは,個人的な好みの問題で使っていない。





ジオラマについて
出動前の整備と魚雷の装着作業のシーンをイメージしてみた。結論を先に書くと,構成力が未熟である,と自覚している。

クレーン
クレーンは殆ど全てのパーツを自作している。特に元になる資料などはないが,一般的な手動式クレーンをイメージしたものだ。若干物理的におかしい点もあるが,まぁ,よしとした。ワイヤーは大好きな伸ばしランナー数本をより合わせて作ったものを巻いてある。そのせいで,本来なら重力でピンと張って下に垂れる先端がほわんとなってしまった。土台のレンガはタミヤのキットを改造したものだ。

貨車
線路・枕木・犬釘・台車等,車輪を除いては自作である。車輪は鉄道のものが手持ちになかったので,1/35の戦車の転輪を流用し,それにフランジを取り付けた。

潜水艦の台車
ズベズダのトラックキットの台車と車輪を流用し,自作パーツを加えて作ってある。レジンの自重変形タイヤがあれば良かったが手持ちにないので,削りとパテでそれらしくしてみた。

地面と小物
一番広い地面は紙である。土の部分は木屑粘土,線路のバラスはN(9mm)ゲージ用のもの。クレーン土台はプラ板である。また,ドラム缶はタミヤのキットだが,工具箱と工具は自作したものだ。こういうのを作るのが面白い。

フィギュア
ベースとなっているのはタミヤのキットだ。自転車兵は無改造のまま。他の兵隊はポーズは言うまでもないが,衣類もスクラッチし直した。実のところ,フィギュアにはあまり力を入れていなかった。マイアーレのところにも書いたが,よくあるフィギュアの色の濃い肌の塗りに違和感があったので,当初は白っぽくしてみたが,やはりしっくりこないので,よくあるパターンで塗り直した。衣類の影に関しては,あまり濃淡さをつけずにおいた。濃淡の強さも重要な要因であるが,塗料にも問題があることがわかった。

私の場合,汚しも含め,塗料は全てミスターホビーの油性アクリルしか使わないのだが,艶消しでも艶が消え切らない。特に筆塗りの場合は顕著で,以前からエアブラシで塗装した後のタッチアップでは,どうやっても艶が合わず困っていた。半光沢でブラシをした後に完全艶消しで筆でタッチアップするとそこそこに仕上がるのだが,完全艶消しでブラシをした場合には,筆でタッチアップをするとどれだけ艶を消そうとしてもレベルが合わないのだ。よって,元より筆塗りを前提としたこのスケールのフィギュアの場合には,今後はタミヤの水性塗料を使うべく準備した。今回は油性のままである。

表情に関しては,元のモールドが表情は言うまでもなく,年齢や国籍などまで表現していることに感心した。タミヤよりも海外のメーカーのもの,特にレジンで供給している小さなメーカーのものはその意味では大変優れている。ジオラマ以外ではフィギュアを作ることはないので,私にとってはあまり重要ではないのだが,今後は少しずつジオラマにも手をつけようと思っているので今回の経験と発見は無駄ではなかった。

総括
ジオラマに関しては,日本人的な様相と欧州人的なものとがひと目で違いが判る。圧倒的に欧州の作者によるものが好みだ。フィギュアのキットを海外製にすると雰囲気がまた変わるのかも知れない。ジオラマは技術や経験よりもセンスだと思う。その点で,私は困るのだが。





サムネールをクリックすると,1280dpi幅のイメージ一覧にジャンプ,更に各写真をリックすると1920dpi幅のフルサイズにジャンプする。ブラウザーによっては自動的にウインドーサイズに縮小されるので,画像をクリックして原寸大にして下さい。多くの写真はフィギュア塗り直し前の撮影です。顔色の良いものが塗り直し後のものです。

船体のみ
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ジオラマ+船体
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ジオラマのみ
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