● マイアーレ S.L.C 200 Maiale ●

実艇について


イタリアのミゼットサブマリン(小型潜水艦)だが,小型潜水艦と言うよりは「人間魚雷」と称する方がその形状に一致している。

人間魚雷と聞くと,日本の体当たり特攻の「回天」が思い浮かぶが,日本以外の国で開発された人間魚雷と称するものは,自爆攻撃を意図した武器ではない。このマイアーレ(イタリア語で「豚」という意味らしい)も,任務完遂後には帰還するか,捕虜になることを前提とした武器であった。


前部のカウリングまでが艇本体であり,それより前は時限弾頭である。2人の乗員が潜水服とボンベを装備し,通常は艦船や潜水艦に搭載され,標的近くまで運ばれた後に出撃するもので,密かに敵船に接近し,敵船の船底にワイヤーなどで固定し,速やかに艇で退避するというものだ。



1935年に開発が始まり,翌年には完成している。S.L.Cというのは低速走行魚雷(Siluro a Lenta Corsa)の略称であり,地中海,特にジブラルタル地域で使用された。




実戦配備は1940年のことで,イタリア第10軽装備戦隊であった。1940年に数度出撃したものの成果は上がらなかったものの,翌1941年秋にはアレクサンドリア港に停泊する商船数隻を撃破した後無事に帰還する。


また同年暮れには,レギーア・マリナー(伊王立海軍)の潜水艦シィーレに,3艇のマイアーレを格納し再度アレクサンドリア港に闇にまみれて出撃,停泊していた英国戦艦のヴァリアント(写真上)とクィーン・エリザベス(写真下)などを撃破する成果を挙げるものの,今回は全員捕虜となった。結局,イタリア敗戦投降までに十数隻の商船や軍艦に多大な打撃を与えた。





緒元等
全長:6.7m(7.6m)弾頭による
直径:0.533m
潜行深度: 15〜30m
最高速度:4.5knot(8.3km/h)
航続距離:6km〜24km(速度による) 爆薬:Mark-I 220kg弾頭・250kg弾頭・300弾頭
発動機:1.6hp 電動機
生産数:約80台





キットについて
イタレリ 1/35

以前には同じイタリアのモデルビクトリアというガレージメーカーからディテールの優れたレジンモデルが販売されていたようだ。日本価格が1万円を越えていたというからちょっと手が出ない(写真左)。その後2007年頃に,イタレリがインジェクション+エッチングでこのキットを発売した(写真右)。現在でも入手は可能だ。


ミゼットサブならではの1/35というディテールアップに手頃かつ,ジオラマにも手頃なサイズである。若干パーツの合いが悪かったり,パーツ自体のプレスのズレがあるのが難点だが,表面モールドはなかなか秀越である。また,要所要所にはフォト・エッチング・パーツが用意されている。付属のエッチング・パーツは厚手で,特に立体感に違和感なく使える代物だ。

また,2体のフィギュアが付属しているが,少し仮分数ではあるが,表情や潜水服の質感など,これらも良く出来ている。潜水艦ということで部品数自体は少なく,素組みで済ますならお手軽なキットだ。また,写真が豊富な35ページにものぼる小冊子が付属しているのが有難い。大変コストパフォーマンスが高いキットだと思う。






制作について  (制作2011年秋分)
なかなかのモールドのこのキット,なかなかなだけにそのまま作るのは勿体ない。資料も付属していることだし,徹底的にディテールアップを試みる。

なお,弾頭は長いものと短いものとのコンパチになっているので,後期型の300kgタイプの長いものにした。弾頭を外した状態でも本体の先頭部はちゃんと作られているので,折角なので,弾頭は接着せずに嵌めるだけにし,帰投時の艇本体のみのチンチクリンなスタイルも楽しめるようにした。ただ,嵌め外しを繰り返すと塗料が剥げるのが欠点だ。

改造箇所@
胴体の配管はシャープにモールドされているが,円柱(パイプ)状ではなく上が丸い台形状になっているので,艇本体と各パイプの上面と下面の「縁」を,キサゲ等で削り取ってパイプ状に変えた。後で思ったが,真鍮パイプやプラ棒に置き換えた方が速かったかも知れないが,仕上がりは上等だったので良しとする。

改造箇所A
前部の水防部。ゲッターロボか溶接面かのような鉄仮面の外側の筋モールドは大変良く出来ているが,パーツの厚みが1mmほどある。実艇には,1mm程度のペラペラの鉄板であるので,エッジを薄く削る。これだけでかなりリアリティが上がる。私が思うリアリティとは,史実として正しいという意味ではなく,本物らしく見えるという意味で,そこには個人の思いやりや感性や楽しみが含まれる。それが本来の模型作りの楽しみだと思っている。

改造箇所B
後部のタンデムシートの背もたれ的位置にあるの箱のようなものを,資料写真を参考に2本のボンベとその収納ラックを自作し置き換えた。このラックのカバーも実際には1mmもないようなペラペラの鉄板のようだ。また,操縦者後ろのコンソールの左側面についているレバーは,キットではモールドになっていたが,雰囲気が出ていないので,切削後にプラ板で作り直した。

改造箇所C
コクピット部にも手を入れる。まず,計器盤だ。キットには土台になるプラパーツにデカールを貼り,その上にクリア板を貼り,更に上にエッチングパーツの枠を載せるようになっている。これでもかなりいい感じではあるが,実艇の写真を見ると,各計器はかなりの立体感があり(当たり前だが),デカールだけではつまらない。そこで半埋め込みの計器筐体や計器ガラス上面の円形の枠などを作って,キットパーツに加えた。

改造箇所D
また,コクピット部には配管が集中しているが,キットパーツと実写写真とでは配管とバルブの数と接続位置が異なっているので,写真に合わせて配管位置を変更したり,追加をした。以前入手したナット表現用の六角のプラ棒は大変重宝する。これで作ったパーツが一個加わるだけで,グッとリアルに見える。

改造箇所E
推進部だ。この部分は殆どはエッチングで出来ているので,そのままでもそれらしい雰囲気が出せる。ただ,プロペラの形状がちょっと変なので,ブレード外形状を修正し,また3枚のブレード単なる平面なので,翼型に曲げた後で前後縁を薄く削った。リンケージ部のホーン類もリンケージワイヤーの取り付き方がそのままでは妙なので,エッチングのホーンに取り付け金具を模したパーツを作り,そこにワイヤー(伸ばしランナー)をリンケージした。ワイヤーはコクピット部のハンドルにつながっているので,そちらも見える部分にリンケージを張ってある。

改造箇所F
透明部品は大きな板が付属していて,適当な大きさに切るようになっている。この手のパーツは塩ビが多いので,手持ちのタミヤの透明プラ板にしたが,このキットのものが塩ビかどうかよく見てはいない。

改造箇所G
また,2体のフィギュアはマスクを着けている(持っている)が,メガネ部分はただのくぼみなので,一方はくり貫き貫通させた後で,被っているほうはそのまま透明のプラ板をはめ込んだ。2人とも立ちポーズだが,一人を艇にまたがったポーズに変更し,もうひとりも元のままだと威張って仁王立ちのようなポーズなので,首ちょんぱし,頭の角度に変化をつけた。

改造箇所H
船台のままだとなんだか違和感があったので,車輪を付けてみた。これはフジミの1/76という半端なスケールのキューペルワーゲンの古いキットの車輪を流用した。


塗装に関しては,ジオラマに入れることを前提としていたので,錆などを強めに入れた。朽ちかけた錆はパテを混ぜたアクリル塗料で,赤錆やオイル汚れはパステルである。また,黒一色なので艶を変えたり,メタリック系を加えることでのっぺりとしてしまわないように試みた。

一見,蒸気機関車のようでもあるが,かなりメカニカルな船体は鑑賞に値する。また,改造の規模も楽しい範囲なので,模型作りを楽しむには非常によいベース素材だと思う。

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ジオラマは,船体を水中に入れたり,パイロットだけを水中に入れたり,色々なバリエーションが浮かんだが,今回はあえて簡単な小規模なものとすることで,船体を強調することにした。ただ,地面に置いただけではドラマがないので,海も加え,フィギュアも1人追加してみた。なぜかドイツ人なのであるがw。またドラム缶が好きなので意味なくタミヤのドラム缶とジェル缶も置いてみた。

フィギュアの塗りは,雑誌などでみかけるAFV系の「秀越なもの」は,確かに秀越なのではあるが,あまりに「典型的」な似たり寄ったりの仕上がりのものばかりで,面白みに欠けると常々思っていた。また,欧米人は白人なのに,あまりに肌の色が濃く仕上げていることに違和感を覚えていた。確かに屋外で活動しているのだから,日焼けはするだろうが。

そんなこんなで,当初は,敢えて白っぽく塗ったのだが,塗料の艶が消えてないせいか,やはり白っぽいせいか,なんだかおもちゃチックに見える。同じ指摘をしてくれた人が居たので,すべてのフィギュアを服も含めて塗り直した。1900番台のファイル名の写真が塗り直し後のものである。赤みと若干の黄色味を加え,当初は適当に描いていた顔も,ちょっと細かく描き直した。

地面は箱絵のイメージで石畳にしてみた。本当は,箱絵のようなベージュっぽい色に仕上げようと思っていたが,パテを全面に塗り込んで目地を掘っていたら,そのままの色合いが非常に心地よく思えたので,無塗装のままで終了させることにして。一度は部分的に着色しかけたが,敢えて無塗装状態に戻した次第だ。

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総括
はやりジオラマは楽しい。ただ,本当にしっかりとしたジオラマを作ろうとすると,大変な労力とセンスが必要になる。また,ジオラマ作りをメインにを楽しむ人とは違って,あくまでも機体や船艇が中心なので,実はこの程度のジオラマが一番バランスがいいのかも知れない。ビーバーの方は少々ゴチャゴチャしすぎている上に,構成力(センス)が貧弱なのが露呈してしまったが,言い換えれば,今後いっそうの進歩が望めるということでもある。



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