トラブルと対策 3

2009.11.21預け,2010.05.20戻り


幌の不具合 (41,500km)


昨年の暮れに幌が壊れた。丁寧に扱っていたつもりなのだが,やはり複雑なメカが祟ってか,壊れた。今回は色々あって半年預けっぱなしになってしまった。


幌を全部外した後のカブリオ。すっきり後方視界がよくなるが,ちょっと間抜け。




シートベルトの取り付け部の様子がよくわかる。


幌部全部をすっぽりと降ろしたところ。「すっぽり」ととは言っても,外すのは骨のようだ。


取り付けアーム部。


反対側の取り付けアーム部。と足。


故障箇所の核心部に近づく。こちらは稼動側(幌前方)の様子。


この部品が左右一対あるが,右側が破損した。部品名は「Catch Folding Top」というらしい。税込み部品代は1個4万円ちょっと。


この部品を取り外すとこうなっている。かなり複雑な構成で各部品はリベットでかしめられているのでこれ以上は分解出来ない。各部がネジ止めになっていればもっと修理が安くなるのだが,スマート共通の欠点だ。


同じ部品の裏側の写真だが,画面右上に写っている細長い部品が折れたようだ。


モータ部のカバーを外したところ。左右各1個ある。この部分は幌が車体に載ったままで作業できるようになっている。


モーターを取り外した後。銀色の部分がモーターマウント。画面左下から右上に平行に2本走る真鍮の太いパイプの中に「Drive Cable」が通っている。真鍮パイプ中央部のマウントが被さった部分の一部が切り取られ,,内部のドライブ・ケーブルがわずかに見えている。ここにモーター・ピニオンが納まるようになっている。


取り外したモーター。1個3万円程度と高額。モーター自体が壊れることなど殆ど考えられず,かつ,このピニオンは消耗品なのに,ピニオンだけを交換出来るようにはなっていない。わずか1千円もあれば部品として販売出来るだろうに,どうしてこういうアッセンブル販売をするのか疑問だ。

この部分の構造をよく見ると,シャフトとピニオンに穴をあけることで,ピニオンのみを交換出来るように改造出来そうだ。ピニオンは小さなものなので,暇な町工場で削りだしてもらえそうだし。ただ,図面があれば安く出来るだろうが,現物持込だと採寸から始まるのでかなり高額になるのかな。


これがドライブ・ケーブル。ケーブル外部にスパイラル・ネジが切られているが,ひっかかり(歯)部は極めて僅かだ。仮に完璧なバックラッシュで取り付けられたとしても,かなり力が掛かる噛み合わせ部なので,寿命は短くなるだろうことは予想出来る。寿命もしくは部品供給形態を考えるとこのメカ構造は,明らかに「欠陥」である。



とりあえず修理完了ということで引き取ってきたが,壊れた側のモーターマウントのメスネジの半分の深さがなめてしまっていたそうだ。これは以前のオーナー自身か過去の修理屋が壊してしまっていたようで,今回の分解時にはマウントネジに締めこまず,貫通ボルトとナットで固定してあったと聞いた。こういうことがあるので中古車というのはどうしてもリスクが避けられない。特に中古屋はこういった情報を仮に知っていたとしても絶対に客には告げる訳はないから,見えない部分は確認のしようがない。

このせいでかバックラッシュがうまくとれず,ガリ音が出る。ドライブ・ケーブルに力が掛かる動作,つまりロックを掛けたり外したりする瞬間になめてしまっている音だ。この状態で作動させているとすぐにギアが削れてしまうので,早いうちになんとかしないといけない。

* * * * *


ということで,「修理完了」とは言えない状態だが,戻って来てしまった。それ以上に問題だったことがある。長期預け置いたせいか,Sクラスなどの高級カブリオとは異なるせいか,丁寧な扱いがされなかったのだろう,リアスクリーンに多数の擦傷を入れられてしまった。

車体購入の少し前に,前オーナーが幌を交換していたので,リアスクリーンも新品の柔軟性と透明性を保持した非常によい状態だったので,購入後も白化防止のケミカルを使って傷が付かないように丁寧に扱っていた。それを見るも悲惨な状態にされてしまった。スクリーン損傷は,マスキングテープ程度でも貼って保護するとか,細心の注意で防げるはずのディーラー側の単純な不注意だ。

勿論,なんとかするように抗議をした。スクリーンだけという部品供給は考えられない。かといって,幌をすっぽり変えてでも直せとまでは言えないので,スクリーンの張替えだけを出来る幌屋など探してなんとかするようにという話でその場を収めた。

ネットなどでも幌の張替えを専門でやっている業者を見かけるし,当然スクリーンのはめ込みもやっているので,純正幌アッセシを買うことを考えれば,かなり安価に張替えられるに違いない。ディーラーがそういう所をみつけられれば,当然軽費はディーラー持ちで張り替えてもらおうと思う。

作業内容を考えれば,自分でもやってやれないことはないだろうが,初めての作業なのでかなりの手間と時間が掛かりそうだし,雨漏りの可能性がある場所だけに,自分でやるのは最後の最後の手段としたい。ディーラーの様子を暫く伺ってどうするか決めよう。

カブリオがオーナーの間で以前から言われていたように,トラブルは避けられないのがこのスマート・カブリオの運命らしい。おしゃれで,それゆれ複雑なメカを有することになったスマート・カブリオの宿命だろう。繰り返しになるが,この欠陥とも言える消耗部品の値段が数千円単位で,かつ車検間隔程度の頻度なら「個性」として受け入れることも出来るが,この値段で頻繁(車検ごとでも)に起きるとなるとなんとか考えないといけない。

これを購入するときに購入店でも言われたし,今回もディーラーで言われたが,頻繁に幌を開閉しない方がいいですよって言葉,これって真理だろうけど,それじゃぁ,わざわざカブリオ買う意味ないじゃん。

これは店の名誉の為オフレコにすべきかも知れないが,実は,いつも世話になっているディーラーはスマート自体は販売もしているし修理経験も問題ないのだが,カブリオ(幌)の修理は初めてということだった。それで修理に苦戦し,途中で部品を壊してしまったらしい。お陰で反対側のキャッチ・フォールディング・トップ,左右モーターを新品にしたそうだ。ドライブ・ケーブルも1組壊したらしい。勿論,ディーラー負担だが。

妙な修理屋ならそれらをすべて故障していたなどと嘘をついて,全パーツ分を請求されかねないが,この工場はその点は信頼が出来るので有難い。責任は工場側にある訳だが,それでもその金額を考えると逆に気の毒だ。尤も,一番いい時期に乗れず,かつ完全には直らず,かつスクリーンを壊された俺はもっと気の毒なのだが。





2010.06.中旬預け,2010.08.09戻り


幌の不具合 その2 (41,700km)
上記の修理後もギアの異音が発生していた。これでは修理完了とは言えない。なぜならこの異音が出始めるとドライブ・ケーブルとモーター・ピニオンの磨耗が早まり,やがては交換することになる。ブレーキ・ディスクとパットとの関係のように,ケーブル2〜3回の交換でピニオンの交換になるだろう。ピニオン交換と言ってもモーターと一体で供給されるので確か1個3万円位だったと思う。暴利以外の何物でもない。

今回はその異音の駆逐あるいは軽減の為と,リアスクリーンの交換の為に持ち込んだが,今回は作業中の写真はない。

最近になってメーカーでは(本当はもっと以前なのかも知れず,この店が気付いていなかっただけかも知れないが),幌のドライブ方法を変更したそうだ。発売から10年経った今頃というのはどういうものなのだろうか。故障が多く出てくるには数年掛かるだろうし,それに対策をするかどうかを検討し,実際に対策品を設計・制作するにも数年掛かるのだろう。いままで「欠陥」を放置したメーカーを責めるべきか,10年も前の販売終了した商品の部品のバージョンアップを称えるべきなのか。

以前,パソコン用ソフトのプロデュースと販売を行ったことがあるが,初期開発に掛かる費用よりも,不具合や性能向上のバージョンアップと顧客の苦情の対応に費用と労力が掛かることを経験しているので,一方的に非難はしないものの,世界のメルセデス,もうちょっと早く対応部品を出し,アセンブリー販売でなく必要なパーツのみをて適価で販売してもらいたいものだ。

幌のドライブ・メカニズムの変更だが,元々は左右合計2個のモーターで,2本のドライブ・ケーブルを動かしているが,対策がなされた現在の方法では,1個のモーターで左右2本のケーブルを動かすようになっている。それにともない,ピニオンギアの径が大きくなっている。まだ恐らく,ギアの構造と素材も変わっていると思われる。うちのBBSを訪問してくれたsaku氏というカブリオ乗りの方から頂いた写真を下に掲載しておく。恐らくはこれが新対応のピニオンギアだと思う。



この対応の理由は,ギア舐めの原因が強過ぎるモータートルクのせいと分析された結果だと想像される。確かに幌を締める際に最後に引き込みロックする時の力はかなり強そうだった。システム変更後はソフトな感じになっている。各パーツの寿命の延長にどのくらい貢献するのか不明だが,上記の写真を提供してくれた方の情報によると,このパーツとシステムに変更されたあともすぐに不具合が発生し,その後また2モータードライブに戻ったようだ。対応品でも不具合が治らないというのはこの機構自体に設計ミスがあるということなのだろう。

{後日追記} その後1年程経つが,特に以上なく作動している。SAKU氏の場合,その後放置してあるそうなので,原因は不明だが,施工の上手い下手によるのだろうか。

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ネットなどで幌屋を見ると,リア・スクリーンだけの交換を行っているところもあるようだが,持ち込んだ工場と付き合いのある幌屋ではスクリーンだけの交換は出来ないらしい。そこで後の部分の幌を交換することになったらしい。これが今回も修理に時間が掛かった理由だ。本国から部品を取り寄せるので,到着までに早くても10日前後は掛かるだろう。

カブリオの幌は3パーツから構成されている。スライドする屋根にあたる部分とその内張りと後部のスライドしない部分だ。今回はこのハイマウント・ブレーキから後の部分で,左右の三角の部分も一体である。幌車を所有するはこれが初めてなのでわからないのだが,新しい幌はサイズがかなりきついらしい。キャンパス地なので初期伸びやその後も時間とともに伸びてくるのだろうか。

そのせいでか,左右の三角部の幌の端っこと,車体側のゴム・モールとの接辺部の納まりがしっくりとしない。前方からボディに顔を付けて見ると,浮いた感じに見える。指で幌の端を引っ張ると中が見える程度に端が浮いている。しかし,引っ張らなければパッキンに接触するようで,豪雨の中で高速を走ったが雨漏りはなかったので,こんなものなのか,で取りあえず納得している。工場でもスマ・カブリオの経験はこれが始めてなので,「こんなんだと思う」以上の確信のある答えは得られなかった。



本来ならプロのくせに経験がないからわからないでは許されないのだが,これまでの努力と今後の整備(この車のね)の充実の為には,カットアンドトライで共にメンテしていく気持ちで行こうと思っているので,少々不満が残るがまぁよしとしておこう。


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肝心のスクリーンだが,様子がおかしい。引き取った時点では雨は降っておらず,完全な透明な状態だった。が,雨の中を走って帰宅した翌日,全体が乳化したように白っぽくなってしまった。ビニールがふやけたような感じだ。古くなった透明なプラパーツやスクリーンが白化したのと似ている。勿論ふにゃふにゃなままで硬化はしていないが。これまで付いていたスクリーンも柔軟性を保っていたが,雨後も白化することはなかった。新品はさらに柔らかいが。しかし,こちらは初期の場合こうなのだとは思えない。走行中や帰宅直後は透明であったし,これはどういうことなのか。工場が盆休みなので休み明けに問い合わせてみようと思う。




実はもうひとつ問題ががある。今回はスクリーン面の保護の為に全面にテープを貼ったらしいが,その跡がテープ幅に綺麗に段々になってしまっている。糊跡ではなく,テープ中央部がへこんで縁が盛り上がったように凸凹になっているのだ。どのくらいの時間はりっぱないしにしていたのか,またその状態で炎天下に放置してあったのかなどは聞いていないが,剥がしたらこうなっていたらしい。気温の低下や馴染んできたら元に戻る可能性もあるが,もどらなければ再クレームだ。これは先方から先に提言されているが,原因を知っておかないとまた同じことになる。初期のスクリーンというのはこういうものなのだろうか。

問題がひとつ解決すると,新たにひとつ生まれる。まるで人生のようなものだ,カブリオの幌の修理は。メインで乗っているのはクーペの方なので,修理自体は構わないのだか,あまり入庫時間が長いと乗れない。今回も22ヶ月の車検期間のうち1/3は家には居なかったことになる。工場が遠いので持込と引き取りもひと手間で,半日が潰れてしまう。幌のトラブルもその修理に伴う手間も,スマート・カブリオを所有したことの運命と受け入れるしかないのだろう。

外車の所有には手間と金が掛かるとは昔から聞くが,安くてもチビでも外車は外車,やはりその例に漏れないようだ。ところで,今回車検証を見比べて初めて気付いたのだが,クーペの全長は2.5mなのに,カブリオは2.51mだった。また重量もカブリオの方が60kgも重い。これは一人乗車と二人との違いくらいな訳だ。以前より,登り坂では走行距離の少ないカブリオの方がなんとなく非力な感じがしていたが,この重量の違いによるものだったのだろうか。スマートの場合,一人乗りと二人乗りとでかなり加速フィーリングは異なるから,単に気分的な錯覚ではないのかも知れない。

幌の話に戻るが,前回の作業中に気になったことだが,グレー・ベージュの内張りが作業によってグリス汚れなどが結構付着していた。気になったので確認したが,作業後クリーナーで落せるとのことだったが,やはり全体が薄汚れた感じになってしまっている。クリーニング屋をやっている友人にも聞いてみたが,やはりファブリックについたオイルやペンキなどの汚れは完全には取れないとのことだ。経験上もそう思うが,プロもそう言うのだから間違いないだろう。これもクレームとして相談してみるか,それとも「染めQ」で染めてやろうか。

なかなか「完璧」とか「満足」といった状態にならないなぁ。購入した日からシフト・スイッチのトラブルや,その後すぐに幌のドライブ・ケーブルの交換と,安心して乗った試しがなかったが,エンジンなどに走行に直接関する部分にトラブルがないのがせめてもの救いだ。

と言うわけで,幌との戦いは未だ続くのであった。


補足:その後3〜4時間日光の当たる場所に置いておいたら透明に戻った。雨や湿度が凄く高いと曇る。乾燥すると透明になる...こういうのでいいのだろうか...。よく分からない...,が実際そうなのでいいことにしておこう。