Macchi M.5
● Macchi M.5 マッキM5 ●
実機について

1912年に,イタリアのジュリオ・マッキ(Giulio Macchi)により設立されたニューポール・マッキ(Nieuport-Macchi)社によって製造された単座の戦闘飛行艇である。ニューポール・マッキ社は,フランスのニューポール社の機体のライセンス製造を行っていたが,鹵獲したオーストリア・ハンガリーのローナー飛行艇のコピー製造を経て,終戦までに,自社のMシリーズ(M.3からM.14まで発展)の開発・製造を行っている。終戦後には,アエロナウティカ・マッキ(Aeronautica Macchi)に社名を変更している。

また,この両大戦間の時期には,シュナイダー・トロフィー・レースなどで,マッキの機体は大いに活躍した。第2次大戦時も戦闘機製造を続け,終戦後は,軍用ジェット練習機やコイン機を中心に,飛行機製造に携わっていた。また,キメラやアラ・シリーズのオートバイなどの開発・製造も行っている。バイク部門は,1970年代にハーレーダビットソンに買収され消滅したが,1990年代終わり頃からは,現アグスタ社のバイク部門で,製造を再開した。

一方,航空機部門は,2012年にフィンメッカニカ(Finmeccanica)傘下となり,その後,同グループのアレーニア・アエロナウティカ(Alenia Aeronautica)社と合併し,アレーニア・アエルマッキ (Alenia Aermacchi)としてその名を留めたが,2015年には解散した。マッキの名称こそ消滅したが,レオナルド・フィンメッカニカ(Leonardo-Finmeccanica S.p.A.)の子会社として,現在も航空・宇宙産業に貢献し続けている。先の現アグスタ社もこのグループの一派である。


このマッキM.5は,ニューポール・マッキ時代の1917年に登場し,250機ほどが製造された単座戦闘飛行艇であったが,飛行性能は当時の機体としては優れていた。ローナーLタイプのコピーであったM.3をベースに改良された機体は,マイナーチェンジにより,尾翼部や翼端フロートを中心に,異なる形状のものが存在する。紅の豚の映画に出てくるイタリア軍機がこれである。

M.5は,イタリア海軍の5つの中隊で戦闘機として運用され,主に船団の護衛などに使われた。終戦間際にはアメリカ海軍でも使用された。また,大戦後の1923年にはイタリア空軍が創設されたが,そこでもまだ65機が運用されており,水上機母艦のジュゼッペ・ミラーリア(Giuseppe Miraglia :起工1921年~進水1923年)にも搭載されている。M.5は,1920年代後半には全て退役している。




主な緒元
・全長:8.06~8.3m
・翼幅:11.9m
・空虚重量:720kg
・最大重量:990kg
・エンジン:Isotta Fraschini V.4B 水冷直列6気筒 160馬力
・武装:ビッカース 7.7mm×2
・最高速:189km/h
・製造機数:約250機
・上昇限度:6,200m
・航続距離:4.5時間


キットについて
HpHmodels

チェコのメーカー,HpH社の1/32スケールのレジン製キットである。大型のレジンキットは高額であるのが通常だが,このキットも2万~3万円とかなりの価格だ。絶版ではないのだが,受注生産なので,流通している品の実勢価格は倍くらいになっている。

一見すると,綺麗に抜けたパーツに見えるが,型の分割が悪いのか,ホールがかなり多い。パーツの合いも良いとは言えない。また,どういう訳か,取説が紙ではなく,CD-ROMになっている。今どきはCDドライブがないパソコンや,スマホしか使わない人が日本でも増えているので,そういう人に取っては悲惨だ。CDドライブが在っても,組立前にPCにコピーしておいて,制作時にいちいちPCを起動する必要がある。勿論,自分でプリントアウトしてもよいが,インクと紙がもったいない。メーカーの場合,費用や必要時間を考えると,プリンターで印刷して,ホチキス綴じにした方が安いと思うのだが。

良い点としては,大きい割に,翼や胴体の変形が殆どない点だ。また,各支柱には0.5mmと1.0mmのピアノ線が芯に入っているので,折れる心配がなく,本来の支柱としての役割を十分に果たしてくれる。一方で,やはり支柱の取り付け位置や,支柱の長さなどがテキトーにお茶を濁されているのは,この手のキットの常だろう。しかし,張線は多くはない上,大雑把ではあるが,位置はそれとなく指示されているので,あまり悩むことはないと思われる。


制作について  (制作2020年1月)

インジェクションキットでは,余程出来たてで脂ぎっていないと脱脂作業は行わないが,レジンは2~3日マジックリンに漬けておく。あまり効果はないのだが,気休めに。大きなパーツは,細目のサンドペーパーやコンパウンドで表面を削ることもある。その後,大きなランナーを超音波カッターで切り取り,サンディングするが,その作業によって,折角のモールドは消え失せ,ゼロからやり直すことになる。まぁ,これはレジンキットの宿命だろうから,変形がなければ良しとする。

なんとか「キット状態」に至らせてから,資料(今回はウインドソック誌やフライの1/48のキットや海外モデラーの作品)を見ながらどこを手直しし,どこをディテールアップするか決定する。機体全体の構造は単純なので,胴体の塗装は木目部分を多くし,マーキングは極力減らし,地味に仕上げることにした。翼は,国籍マークが太陽光で裏抜けする様子に仕上げるが,今回は,かなり薄めを目指す。コクピット部も元々の構造が単純なので,配線などを追加し,ちょっと見栄えよくなるよう工夫した。

そういった事情で,この機体では,エンジン部が唯一の見せ場となるが,イソッタV.4Bはそれほどメカニカル感がないので困る。キットのモールドがちょっと雑な仕上がりなので,思い切って作り直すことにする。V6エンジンは比較的よい写真が多く見つかるのだが,V4の明瞭でしっかりした写真データは,ネット上でもなかなか得られず,収集に時間が掛かった。

また,今回はモデルカステンのリギング糸を使ってみた。理由は2つ。まず,これまで使っていたEZラインは扱いやすく嫌いではないのだが,致命的な欠点がある。断面が真円ではないのだ。なので,注意して張っても,何本かはある程度ネジレが出てしまう。地のままなら殆ど気にならないのだが,シルバーで塗装するとネジレが酷く気になる。もう1点は,全くテンションが掛からないので,補強としての意味はなく,単なる装飾になってしまうところだ。単座機では問題ないのだが,翼幅のある複座機では翼間支柱だけでは強度が不足し,上翼が心もとない。以前は伸ばしランナーを使うことで補強が出来ていたが,素材となるタミヤの丸棒のスチレンの密度が低くなったようで,強度が出なくなった。張った後にちょっとのことで切れるので話にならないので,EZラインを採用していたが,上記の理由で不満があった。

翼端フロートは,パーツが2種類入っているが,形状が面白い前期タイプを選んだ。下にスキー板のようなものが付いているタイプだが,どうも実機写真と雰囲気が異なるので,この部分も作り直した。フロートといえば,ハルのチャイン部のパーツの合いが悪く,瞬間パテで修正した。


以前は,ウエーブの黒い瞬間接着剤を使っていたが,硬化後にサンディングするとポロポロと崩れるようになることがあるので使用を中止した。おそらく,長らく置いてあると,中で実になる成分と接着剤の成分が分離してしまうのだと思う。かと言って,粘度が高いので,振ったくらいでは混ざらない。それに代わってガイアノーツの瞬間カラーパテを使うようになった。色々な色が出ていて,フギュアは肌色系,ミニタリーは白などと使い分けると,後の塗装が便利である。また,ウエーブのような粒子感が一切なく,非常に滑らかで,サンディング性も良い。ただし,超遅硬性なので,通常は硬化促進剤が必要となる。極めて薄く塗れば数十秒で固まる。 硬化促進剤もウエーブのものは塗膜やABSまで溶かしてしまうので,塗装前のレジン以外には使うことがなくなった。ウエーブの商品は,全般的に好きではない。

硬化促進剤と言えば,明邦化学というところから塗膜を犯しにくいものが出ていたが,製造中止になってしまった。以前は,鮎釣り道具の釣具屋で買っていたが,最後の取り寄せということで,十数本を確保したが,なくなるとちょっと不便だ。もっと不便なのは,瞬間接着剤用のノズルだ。アイコムというところからKK-3というちょいう極細ノズルが出ている。これは10本で4~500円と高価だが,模型作りに唯一使える細さである。が,それも最近どこでも売り切れになっているのだが,このまま生産終了にならないことを望む。最悪の場合,以前のように自作も出来るが,なかなか面倒なので,生産を続けてくれるほうが有り難い。福島金属の真鍮パイプや0.1mmの洋白線といい,ないと困るものがなくなってしまって,手持ちの在庫が切れたらどうにもならない。


さて,制作に話を戻すと,木部はいつものように粗目のサンドペーパーで傷を入れたのだが,今回のレジンは硬化不良ではなく,しっかりと硬化はしているものの,非常に柔らかく,傷が深く入りすぎたが,結果的に良い効果となったようだ。胴体と翼は,ミッチャクロンを薄く吹いてから,白のサフェーサーを下地を作り,上塗りを行った。ABSのインジェクションでは下塗りはしないが,レジンは,ホールが多いので仕方ない。

各部分のディテールアップに伴う工作は楽しい。塗装は上にも書いたように,翼の透け具合が気に入らず,一度全部アセトンで剥ぎ落としてやり直した。レジンはアセトンには強いが,柔らかいレジンは長くアセトンに晒すと良くないようである。また,支柱の芯線は硬いピアノ線なのは心強いのだが,長さ調整にカットするには,ニッパーは元より,大型ペンチでも無理で,ワイヤーカッターでないと切れなかった。ワイヤーカッターなどをもっているのはDIY好きがドロボーくらいのもんだから,模型しか作らない人ならここでも手こずるだろう。結論としてはっきり言えることは,CDドライブの付いたPCとワイヤーカッターがない人は,買わないほうが良いキットであるということだ。

ちなみに,今回は制作の都合上,現在の位置にせざるを得なかったが,下翼からエンジン櫓部への張線の実際の位置は,この模型の位置ではなく,櫓上部の支柱とエンジンマウントとの間辺りに取り付けられているので,もし,作られる方は,そのようにした方が良いだろう。

また,実機に搭載されていたエンジンの細部や,櫓の補強の入り方などは個体差がかなりあるようで,自分のイマジネーションで作り込んでいった方がいいと思う。この機体は,構造が極めて単純なので,見せ場は,ほぼエンジンしかない。実機にはハーフカウルが付いているが,エンジンが丸見えになるよう,カウルは外した状態にすれば,通常の複葉機よりもエンジンがよく見えるので,エンジンを目一杯ディティールアップするのが良いと思う。



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【これまではサイトに公開していなかった制作途中の様子】

キットの概要写真

ハルの制作

主翼の制作

フロートの制作

エンジンの制作

エンジンの制作2

エンジン完成1

エンジン完成2

エンジン完成3

完成した胴体に下翼を仮付けする

エンジン櫓の接着

エンジン櫓のステー取り付け

外側支柱の制作とラダーリンケージについて


【完成写真】


 ギャラリー1



 ギャラリー2



 ギャラリー3



 ギャラリー4



 ギャラリー5



 ギャラリー6



 ギャラリー7





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