Spad S.VII
● スパッド S.7 ヴィンデッシュ搭乗機 Spad S.VII flown by Rudolf Windisch●

実機について



フランス軍が誇る単座戦闘機スパッド7型は,1916年半ばに登場する。機首に大きな円形のラジエターを備えていることで,一見すると空冷星型エンジンが搭載されているかに見えるが,軽量で強力なイスパノ・スイサV8エンジンを搭載していた。また,片翼2径間の翼間支柱を持つ頑丈な飛行機で,フランス・イギリス両軍で6,000機程度が投入された。第1次大戦で最も成功したフランス機のひとつで,200馬力にパワーアップした8Bエンジンが搭載された後継の13型は8,000機以上が製造され,遅れて参戦したアメリカ軍でも使用された。戦後も欧州各国やロシアや南米など,世界各国で使用された。

模型のモデルとなったのは,フランス軍の65航空隊に所属する機番S4267の機体で,1918年1月12日に,ドイツ軍のヤシュタ9(第9戦隊)に所属するフリッツ・ピュッター(Fritz Pütter)によって,ドイツ領域のビナリヴィル(Binarville)に強制着陸させられたものである。その鹵獲された機体はヤシュタ66に移送され,ドイツ軍の若きエース(最終スコア22)のルドルフ・ビンディッシュ(Rudolf Windisch)が搭乗した。

ご存知のようにスパッド7は,基本的にリネンにクリアドープ仕上げであったが,鹵獲後の機体は,機体色を塗り替えられ(赤説と紺説有り),当然ながら国籍マークも塗り替えられたが,フランス軍で使用されていた当時のドラゴンの戦隊マークと,上翼上面と胴体の白と青の帯はそのまま残された。

当初,軍上層部からは,この機体で飛行することを禁止されたそうだが,エースだったことでワガママが許されたようである。しかし,高性能と名高いイスパノ・スイサエンジンには,実は隠された設計上の欠陥があり,恐らく,それらへの対処や通常のメンテナンスパーツの入手が困難だったとみえ,数ヶ月でこの機体を降りてしまったようだ。イスパノ・スイサのエンジンについては,販売中の著書に詳細に記載したので,興味が有る方はどうぞ。ページサンプル有り。

「飛行機の発展とその裏事情 1」



主な緒元
・全長:6.1m
・翼幅:7.8m
・空虚重量:500kg
・最大重量:705kg
・エンジン:Hispano-Suiza 8Aa 8気筒150馬力
・最大速度:187km/h
・航続距離:400km(約2時間半)
・上昇率 :3,000mまで11分半
・上昇限度:5,500m
・武装:.303 Vickers 機関銃1門


キットについて
スペシャル・ホビー Special Hobby 1/48
発売から既に20年ほど経つ簡易インジェクション・キットで,エッチングと一部にレジンパーツが付属する。エッチングは板が薄すぎる。プラパーツは簡易インジェクションらしくボテッとした抜け具合だが,総合的にはそれほど悪くはなく,合いにも大きな問題はない。個人的には好きなメーカーである。



制作について  (2021.10)
カウリングやハッチを閉じた状態に仕上げるのがキットの標準仕様なので,エンジンは付属しない。本作もマーキングを楽しむ為に制作したので,エンジンは入れていないが,その分,コクピット内部には手を入れて再現した。メーターは自作デカールを使用。

翼間支柱は両端に補強の為の金属線を埋め込んだ。胴体支柱も胴体側のみ金属線を入れた。支柱の取り付け位置は,パーツにあるマークでほぼ問題なかったが,張線の揺れドメを兼ねている内側の支柱は外側の支柱よりも細い作りで,それを介して取り付けられる張線の取り回しが一般の複葉機とは異なる。また,張線は外側の支柱と翼の間に挟んだ金属板に固定されているが,1/48ということでそこまでは再現しなかった。また,張線のテンションのせいか,全てを張り終えた後で,上翼がズレてスタガーが付いてしまったので,一度支柱を外し位置を修正した。その修正のせいで,上翼下面がやや汚くなってしまった。テンションが掛からないゴム系の糸の方が良かったかも知れない。この機体の張線はややこしく,やり直し分を差し引いても,通常の単座機の4倍ほどの時間を費やした。

この機体の色は,実は濃紺という説もある。モノクロ写真の他の部分の色を鑑みると,どうやら赤が妥当だと思える。そこで,深いが暗くない赤にするために,下地を黒で塗装し,その上にキャラクターレッド(Mr.カラー108)という赤を塗った。濃い赤にも朱にも見える仕上がりとなり,気に入っている。一方,青いラインはもう少し彩度を落とした方が良かったかも知れない。

なんと言っても,一番の楽しみはドラゴンを描く工程にある。実機写真は上に挙げた1枚しか存在しないようで,スターボード側のドラゴンの向きは確認出来ないが,ドラゴンの形状から推測し,こちら側と同様の頭を前向きにした。今回,輪郭のみマスキングを使ったが,なぜか漏れが酷く,下地の修正でやや筆跡が残る状態になってしまったが,肉眼での鑑賞距離ではほぼ問題ないと思う。トラゴンの吐く火(舌?)が左右で長さが違ってしまったのはご愛嬌。気づいたのが完成後だったので,修正する気力がなくなっていたので放置した。


Gallery 1

Gallery 2

Gallery 3

Gallery 4


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