クレルジェ(Societe Clerget-Blin et Cie) 1913年8月13日設立 フランス

フランス語は全く分からないので,人名等の日本語表記は正確ではない。また年代に関しては,初動時期や実用販売時期等の基準の違いでページ内の表記にばらつきがある。




クレルジェ(Clerget)社

1890年代末からエンジン研究・試作を行っていたフランスの発明家「ピエール・クレルジェ(Pierre Clerget)」は,技師の「ウージェン・ブロン(Eugene Blin)」と共に航空機用のエンジンの製造販売する会社を1913年に設立した。エンジンの多くは英国各社のエンジンメーカーで製造された。

1907年の7気筒ロータリーエンジン


Clerget 7Z(1911年初動 7気筒 10.2L 80hp)は,約350基が英国のGordon Watneyで生産された。主な搭載機: Avro 504, Bristol Scout, Sopwith Pup, RAF(=Royal Aircraft Factory) B.E.8, RAF S.E.2, RAF S.E.4,

Clerget 9A(1914年 9気筒初期型 シングルプラグ)

Clerget 9B(9気筒 16.3L 173kg 100-130hp デュアルプラグ)9Bfはロングストロークバージョン。 主な搭載機: Armstrong Whitworth F.K.10, Avro 504, Nieuport 12, Nieuport 17, Nieuport Triplane, Sopwith Triplane, Sopwith Camel, Sopwith Baby, Bristol M.1,






グノームやローヌのシングル・プッシュロッド方式と異なり,クレルジェはツイン・ロッドのシステムだ。吸気はローヌと同様にクランク内部から銅パイプでシリンダーに送り込む方式だが,給気弁がシリンダー上部にあり,排気同様にプッシュロッドで作動する。しかし,OHCではなく,吸気用と排気用の両カムは,ローヌなどと同様にクランクケース前方内部に位置している。


キャメルに搭載された様子 多分,Clerget 9Z (9気筒 110hp) 9Bfかも。



解体レストア中の Clerget 9Z (9気筒 110hp)






Clerget 11Eb(1918年 11気筒 232kg 200hp) 主な搭載機: Sopwith 2FR Bulldog (1918年 2機のみ制作), Sopwith 3F.2 Hippo (1917年 2機のみ制作), Sopwith TF.2 Salamander(1918年 419機製造)


クレルジェについての詳細データー(仏語の2.9Mbのpdfファイル)



1918年製のクレルジェ「X16気筒」エンジン



1次大戦後,1929年製のクレルジェ9A・エンジン


このように,グノーム・ローヌエンジンがオーベル・ウーゼルによるライセンス生産で,ドイツ機やオーストリア機にも搭載されたのと異なり,クレルジェのエンジンは主に英国機に搭載されていた。一般に,工業技術の違いから,オーベル・ウーゼルのエンジンは精度が低く信頼性も低かったようだ。

ペーター・ヤコブスの搭乗機であるフォッカーDr.I は,元々搭載されていたオーベル・ウーゼルを,捕獲したキャメルからクレルジェに換装していたとされている。

ライセンス製造により多くの国とメーカで製造されたロータリー・エンジンは,第1次大戦で多く使われたが,その元になったのは,グノーム・ローヌ社とクレルジェの2社の数種のエンジンであったのだ。



グノーム・ローヌ・クレルジェ・オーベル=ウーゼル以外にもジーメンス=ハルスケやベントレーもローターリーエンジンとしては有名である。それらを含めた参考資料(洋書)として「The Rotary Aero Engine」を紹介しておく。データが大きいので2部に分割した。
The rotary aero engine 前半

The rotary aero engine 後半