世界初のバイクは1885年に,世界初の4輪自動車(エンジン馬車)は1886年に発表されている。1890年になると,二人はDMG(Daimler Motoren Gesellschaft)という会社を設立し,1892年に自動車の販売を開始した。上記の通り,ダイムラーは,その後1900年に他界,マイバッハも1907年にDMGを退社している。
Aひとまず置いて,次にベンツ氏
ベンツ(Karl Friedrich Benz)は,1844年生まれで1929年に没している。彼は,世界初の「実用的」自動車を発明したとされている。言わずと知れた,現在のドイツ車(自動車会社)の「メルセデス・ベンツ(ダイムラーAG)」のもう一人の創始者である。
1883年,ドイツのマンハイムで最初の自動車会社「ガス動力車両製造会社(Benz & Company Rheinische Gasmotoren-Fabrik = Benz & Cie.)」)を設立,当初は2ストロークエンジンを開発していたが,1886年には4ストロークエンジンを搭載した3輪自動車の開発に成功する。これをもって世界最初の実用ガソリン式内燃機関自動車の誕生とされているようだ。
その後,1890年代は,ダイムラーとベンツが切磋琢磨しながらガソリン・エンジン式4輪自動車という乗り物を確立して行くことになるが,第1次大戦後の1926年になると両社は合併,ダイムラー・ベンツ社が誕生した。
余談であるが,現行の車体も含め,この会社の乗用車の名前は全て「メルセデス・ベンツ」で,その下の「Aクラス・Bクラス・Cクラス・Sクラス」などという名前でランクを表しているのはご存知の通りだ。その後,業界お決まりの合併と分裂を何度か繰り返し,最後はクライスラーと合併,分裂,現在のところ「ダイムラーAG(アーゲー=Aktiengesellschaft=株式会社)」という社名に落ち着いている。繰り返しになるが,「メルセデス・ベンツ」は社名ではなく車名(若しくは部門名)である。我が愛すべきスマート同様にw。つまり,いわゆる高級乗用車を扱う「メルセデス・ベンツ・カーズ」という名は,部門名(ブランド名)として残っているということだ。
さて,以上はダイムラーとベンツについての概要であるが,肝心の第1次大戦時の航空機エンジンの話が出て来ていない。どの国のどのメーカーもそうだが,平時と有事(戦時下)では,製造するものが異なる。車関係のメーカーは軍用機やタンクなどの製造に係わるようになるのは当然である。ダイムラーとベンツも同様で,2輪・4輪車用のエンジンの技術を元に,航空機用エンジンを製造するようになる。
ただ,当時のドイツは工業力に優れていた訳ではなく,単発・単座の小型戦闘機に搭載されていたロータリー・エンジンはどれもフランスが原産で,その技術を元に英国やドイツがライセンス生産せざるを得なかった。ついでだが最初期のロータリーエンジンも2輪車用であった。
【注】他ページにも書いたが,ここで言う「ロータリーエンジン」とは,マツダのサバンナやRX7などに搭載された三角おにぎりのローター・ピストン式のバンケル型エンジン(Felix Heinrich Wankel博士が1988年に発明)のことではない。詳細は左フレーム上段のロータリー・エンジンのページを参照されたし。
一方,ダイムラーとベンツはそれぞれに液冷エンジンの開発を行なっていた。従って,両社の第1次大戦時のエンジンは液冷のみである。大型のエンジンを搭載出来る機体が登場したのが遅かったせいで,それぞれ4バージョン程,かつ実用になったのは主に2種類ずつと考えればよいのかも知れない。またベンツのエンジンはダイムラーのそれと部品の工夫などに差があるが基本構造は同じなので形状も似ている。
また,ドイツのダイムラー製のエンジンはメルセデスとも呼ばれているが,オーストリアにあったダイムラーの子会社アゥストロ・ダイムラー社(Austro-Daimler)の刻印がついたエンジンもある。この子会社は1899年から1934年まで存続し,自動車を製造していたが,世界最初と言われる装甲車なども製造(1904年)していた。
では,ダイムラー製の航空機用メルセデス・エンジンのページへどうぞ。