実機について
イタリアのミゼットサブマリン(小型潜水艦)だが,小型潜水艦と言うよりは「人間魚雷」と称する方がその形状に一致している。マイアーレとはイタリア語で「豚」という意味らしい。
人間魚雷と聞くと,日本の体当たり特攻の「回天」が思い浮かぶが,日本以外の国で開発された人間魚雷と称されるものは,操縦者もろとも自爆する攻撃を意図した武器ではない。
前部の操縦席までが艇本体であり,それより前の1/3ほどに当たる部分が時限弾頭となってる。このマイアーレの運用は地中海の沿岸部であり,2人の乗員が潜水服とボンベを装備し,通常は艦船や潜水艦に搭載され,標的近くまで運ばれた後に出撃するもので,密かに敵船に接近し,切り離した弾頭部を敵船の船底にワイヤーなどで固定し,速やかに艇で退避,もしくは泳いで帰投するか,どちらも不可能なら捕虜になることを前提とした武器であった。
1935年に開発が始まり,翌年には完成している。S.L.C.というのは低速走行魚雷(Siluro a Lenta Corsa)の略称であり,地中海,特にジブラルタル地域で使用された。
1940年,イタリア第10軽装備戦隊に実戦配備された。同年に数度出撃したものの成果は上がらなかったが,翌1941年秋にはアレクサンドリア港に停泊する商船数隻を撃破し,無事に帰還している。
また同年暮れには,レギーア・マリナー(伊王立海軍)の潜水艦シィーレに,3艇のマイアーレを格納し再度アレクサンドリア港に闇にまみれて出撃,停泊していた英国戦艦のヴァリアント(写真上)とクィーン・エリザベス(写真下)などを撃破する成果を挙げるものの,その時には全員捕虜となった。それでも,イタリア敗戦投降までに,十数隻の商船や軍艦に多大な打撃を与え,回天とは異なり,も実用的な兵器であった。
ちなみに回天は28度の出撃で,アメリカの給油艦ミシシネワを撃沈した以外には,これといった戦果を上げていないが,一方で,訓練時の事故や作戦途中での故障による犠牲者は145人にものぼっている。
主な諸元
直径:0.533m
潜行深度: 15~30m
最高速度:4.5knot(8.3km/h)
航続距離:6km~24km(速度による)
爆薬:Mark-I 220kg弾頭・250kg弾頭・300弾頭
発動機:1.6hp 電動機
生産数:約80台
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