Biff Repair
● Biffの修理 ●
このページは,番外である6年前に作ったブリストルF.2bの修理の様子である。


展示会やら出張やらで持ち運んだ機体は小破の修理を繰り返して来ていたが,半年ほど前に,現場監督によって大破に至ったのであった。こちらがその張本人の猫監督殿である。


ある日のこと,いつものように暇を持て余していた彼は,何やら隣の部屋でゴソゴソしている。我が家では,スピーカーボックスで爪とぎをしない限り,猫は何をしても許されるのでその場は放置した。とは言え些か気になったので,暫くしてから見に行った。

「ンニャァ~ンゴ(ドヤ,ピッタリ収まったデェ~)」

という得意げな猫監督の声がするが姿は見えない。声は,棚の奥の一番下に隠して積んであったダンボールの方から響いて来ていた。上に積んであったダンボールを掘り起こした監督が,彼の言葉通りにピッタリと箱の中に収まっている。ご存知のように猫は,三度のちゅ~るの次に,ダンボールが大好きなのである。

「あのぅ,監督ぅ~,その箱は入ったらアカンヤツなんですけどぉ...」
「ナゴナゴォ~(まぁ,ええんちゃうかぁ),ゴロゴロゴロ(気持ちエエねん)。」
「まぁ,入ってしもうたものはしゃぁないな。でも出て下さいなぁ,監督ぅ。」
「フニャァ~ンゴ(いけずやなぁ)。」

完成した模型は,ダンボールに入れて保管してある。その箱にはビフを入れて,ガムテープで蓋を軽く止めてあっただけだからか,ちゃっかりと開梱していた。

その後,約半年の間,放置プレーを続けていたビフの破損状態の検証と修復判断に本日掛かった。損傷の様子は,実機が受けた損傷とそっくりで,「なるほど」と思った。構造的にそう壊れるのだということが判った。そして,あれらの損傷した実機の写真の機体も実は墜落や転倒ではなく,猫に踏まれたのだということが判明したのである。

業務中の監督は優れた人材であり,制作に当たっては,下の写真のように多大な貢献をしているのであった。


実は以前にも,この機体は,監督助手(あまり現場には出てこない別人である)にも尾部を踏まれていたのであったorz 柔らかいく軽い彼女お体のお陰か,この時には垂直尾翼と尾橇が折れた程度の損傷で済んだ。

さて,今回の損傷箇所は?

損傷箇所は,スターボード側の翼間支柱4本(この機体は2径間)と,上翼の胴体支柱4本(全部),回転機銃,ラダー,片側のエレベータであった。下翼の胴体支柱も2本ほど接着部が外れているが,折れてはいない。足回りは前後とも無事である。


ご存知の通り,この機体の主翼は上下翼共に胴体から離れた構造で,かつ,強めのスタガーが付いている。なので,新品キットの組立時にも,正規の位置に両翼を固定するのに些か手が掛かったが,修復となると尚更である。我が家は,床・天井・壁・風呂からトイレ,巨大ウッドデッキ・車庫・など全てを自分でリフォームしたが,家のリフォームと同様に,1から作る方が楽で,修理や改装は大変な作業である。

下の写真の赤の矢印は修復した胴体支柱を,既に胴体に取り付けた後の状態である。このように上翼用の胴体支柱は4本あるが,3本が真ん中で折れており,かろうじて1本だけが繋がっていた。幸い下翼の胴体支柱は,接合部が外れただけだったので,溶剤の流し込みで修理出来きた。翼間支柱は,ポート側はほぼ損害がないが,スターボード側の4本が全て根本のホゾの部分で折れている。

真ん中で折れた上翼用の胴体支柱は,力が掛かる割りに細いので修復のネックになりそうだ。直径1mm程度の折れたプラパーツをトン付する場合,折れ目の外側にも瞬間を盛らないと強度的に無理があるが,形状が変わってしまうので,やはり0.4mmの洋白線を埋けて繋ぐことにした。これなら,外径周りに余分に瞬間を盛らなくても持つだろう。折れた3本をなんとか修復した。奥まったパーツなので,この段階で塗装をしておく。上下両端には金属線は埋けていない。もし,支柱両端にモールドがなければ作り直した方が早いだろ。残念ながら,この修復の様子の写真は撮り忘れた。


次は翼間支柱である。真ん中で折れている訳ではなく,上下翼のホゾの部分が折れているので,4本全てをもぎ取って,支柱上下両端に0.4mmのドリルを穿ち,同径の洋白線を埋けた。


当然,翼側にも同径の孔を穿つが,翼面にドリルを立てる際には,プラ棒でつっかえ棒をして上翼を保持し,上下翼の間隔を確保した。

0.3~2.0mmの細いドリルは,自作した10φのプラ棒を持手にし,それに埋め込んだものを0.1mm毎に作ってある。0.3mmに関しては長さ2cmほどの短い柄のものも作ってある。ピンバイスでは狭い場所で使えず,また,ピンバイス本体が重いので,机から転げ落ちると必ずドリル本体が折れる。今回,0.3mmで下孔を掘っている最中に,不意にコジてしまい,また1本折ってしまった...最近作業が雑なのですぐに折ってしまう。折れても上手く抜ければいいのだが,深く掘ったところで折れると大事になる。

三菱マテリアルのドリルがよく切れるのだが,最近大幅に値上がりした。以前は10本のケース入りが3千円台で買えたが,今は5千円前後する。かと言って大陸製は話にならないし...。アマゾンでは,針金みたいにクネクネ曲がるものが売っていたりする。確かに折れることはないだろうが...恐るべし...。

翼間支柱に洋白線を埋け終わったら,翼に取り付ける。残っている張線でテンションが掛かって翼間が詰まって来るので,仕方なく最低限の張線を切除する。この機体の張線は支柱ではなく,翼面(スパー)に取り付けられているので,切らなくても支柱自体の脱着は可能であるが,テンションが掛かっているとスタガーの調整がやりにくいので,結局スターボード側の外側の張線を全部撤去した。それでもまだ内側の径間のテンションが掛かっているので,やはりプラ棒のつっかえ棒を仮置きして上翼を支える。修復した翼間支柱を外側から嵌め込んで行く。ちなみに,支柱は内側と外側とで太さが違い,掛かる力が少ない外側は細くなっている。


4本全てを仮設置したら,マスキングテープで引っ張りながら,上下翼の捻じれとスタガーの具合を調整してテープを固定する。その後,1本毎に抜いて瞬間を付けてまた刺し直す。外から流すだけより丈夫になる。1本植える毎に捻じれとスタガーの確認を行い,4本全てを接着する。その後,外側から瞬間を追加で流すが,こういう場合に,超極細のノズルが必要であるが,愛用のKK-3というのが長らく売り切れでもう製造中止かも知れない。手持ちの数十本で終了となる。代用としてハセガワのTL15が使えそうである。この2商品以外の瞬間用ノズルは全て使いものにならない。恐らく,エッチングの嵐である船屋さんも同様だろう。

瞬間は,基本的に接着部を盛らないと強度が出ないので,多目の量の瞬間を使っている関係上,暫く放置して完全に硬化するのを待ってから胴体支柱に掛かる。上下翼を支えるつっかえ棒を胴体寄りに移動し,上翼の胴体支柱に近い部分を少し持ち上げる。本来ならこの支柱の翼側の端にも洋白線を埋ける方がよいが,翼下面に孔を開けるのが場所的に厳しいので,翼側はトン付にした。胴体側はホゾが生きているので問題ない。



【張線と仕上げ】
今日は,猫監督はオフ日のようで,修理している周りで遊べ遊べと,長らく煩く付きまとってくる...そんなお気楽なヤツにはお仕置きだべぇ~。ヤツはお仕置きされるとご機嫌なドMなのであった。そして,その喜びを持たらしている根源が自分であるとは,勿論,知る由もない。この状態で数分放置し完全に硬化したら張線を張る。



胴体支柱の方は,張り直す張線は2本しかないが,予想した通り困難を極めた。この機体やFE.2bのように張線が多い機体の場合,張る順番をよく吟味しないと,後で頗る面倒なことになる。今回は修理なので選択肢はないが,2本張るのに30分も掛かった。使用したのは,他の部分と同じモデルカステンの0.2mm(1.5号)。その後,翼間支柱の張線を行う。フライングワイヤーはダブルになっているが,場所的には容易なので,先の胴体支柱部の2本を張るのと大差ない時間で,1径間分の8本全てを終えられた。


最後に,主翼以外の部分の修理を行う。写真はないが,ラダーとエレベーターには0.3mmの洋白線を2本ずつ埋けてあったが,スターボード側のエレベータの洋白線は2本とも折れていた。折れた金属線はプラ面とツライチになっていて抜くのが難しく,無理して抜くとその部分のプラがグダグタになってしまう。ヒンジ部以外に埋けることも出来るが,この機体は水平尾翼とエレベーターの間隔が広く(本当にこんなんに隙間があって大丈夫だったのだろうか),隙間から線が僅かに見えるのが嫌で,結局埋け直しは行わずに瞬間のトン付で対処した。ぶつけなければ問題ないだろう。接合部の両側(ヒンジ部)は,カッターで古い接着剤を落とし,綺麗に揃うように整形しておく。

銃座は外せないので,こちらもたった1本の線を張るのに20分以上掛かり,喚き散らしながらようやく終了。あちこちのタッチアップをして修理完了。何度も展示会などに持ち運んでいるせいで痛みが出ていたが,ほぼ見られるレベルに戻った。

銃座やら爆弾やらは通常は一番最後に取り付けるが,今回は既に全部付いているので,作業中に保持するところがなく,また作業しやすい位置(角度)に置くこともままならず,修理中に他の部分を破損させないように気を使ったのでかなり疲れたが,なんとか修理を完了した。


隣では,オフの監督が,「ニャゴリンコ,ニャンニャゴ(おせーんだよ,早く遊ぼうぜ)」と,悪ぬこの目で誘うのであった...。だが...本当は...この目になっている時には...おネムなのだということを...私は知っている...。

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