トラブルと対策 2

2009.04.20.


リモコンキーの不具合


中古車というのはその名の通り人が使った後のお下がりだ。新車でもいろいろと不具合があることもある訳で,中古に完璧を望む訳ではない。ましてや7〜8年も経つ車だからなおさらだろう。

この車を購入したスマート専門店では,中古車の販売に当たって3ヶ月の保証が付いている。とは言え,工賃のみで,部品代は実費で徴収される。パーツのアッセン販売が多いスマートでは,小さな部品が1個壊れただけで,まるっとそのユニットを交換,数万円から時に数十万円になることもある。よって,このシステムも致し方なかろうとも思う。

また,私の場合,遠方からの購入なので,不具合が出たからといって頻繁に修理に持ち込むことが出来ないが,保証期間内の発覚・発現した不具合に関しては,その時点で報告をし,実際の修理は3ヶ月を過ぎた後でも工賃無償で応じてくれているのがありがたい。

さて,前置きが長くなったが,今回の不具合についてだ。このカブリオはディーラー車なので,リモコンキーは赤外線式になっている。平行車の電波式に比べ,コントロール出来る距離は元々かなり短いらしい。

しかしながら,我が家のカブリオは,下手すると窓ぎりぎりまで近づかないと反応しない。情報によると,赤外線の受光部は数年で性能低下を起こすことが報告されているようで,これが原因かと考えたが,まず,キーの電池を交換することにした。

いくら中古とは言え,リモコンキーの電池くらいはサービスで新品に交換してあるかと思いきや,そうではないらしい。新品であるかどうか自体は問題ではなく,やはりどういう状態で引き渡しているかは知らせるべきだと思う。

マイナスなことは聞かれなければ言わないという業界の常識と,一生に何度も購入する訳でないコンシューマー・ユーザーの常識が違うのは当然で,そのギャップを埋めていくのが将来ある商売というものではないかと思う。知らない奴は損をすればいいという時代では最早ない。


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また本題から逸れてしまった。さて,電池交換時のケースの分割は電波式のものより簡単だ。背中の溝をコインでちょっとこじてやれば簡単に分割出来る。

ケースを割って,基盤を取り出してみて驚いた。2個のリモコンの一方だけだが,2個ある出力用の赤外線LEDの一方の足が2本両方共に折れた跡があり,それを半田で修理してある。いや,修理と言えるものではなかった。

以前,車とは関係ない話だが,モーターの線をつなぎかえるのに,「瞬間接着剤でケーブルをつないだが動かないんだけど」といった書き込みのある相談BBSを読んだことがある。どんなベテランも最初は初心者である。それはそれでいい。が,DIYで何かをするにはそれなりの知識は必要だ。

誰でも経験値はゼロからの出発であるが,最初の経験をする前にどれだけ知識を蓄えておくかは人によって異なる。無知は罪であると昔から言われるが,必要ない知識はなくてもよい。無知で結構。だが,何かをするのに必要な知識もなしに事を行うのは,それは確かに罪である。

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不良半田の代名詞に「いも」と「天ぷら」というのがある。部材の加熱不足な状態で半田だけを溶かせて垂らした状態のことで,肝心の部品の足と基盤のパターン面の銅泊が電気的に接触していない状態だ。電流量が多い場所だと発熱・発火も起こす危険な状態。

信号や小電流の場合,機能したりしなかったり=いわゆる接触不良,誤作動や不作動の原因となる。後で思ったのが,この「あきれる状態」の写真を撮り忘れたのが残念だ。悪い半田付けの見本にバッチリの滅多にお目に掛かれない見本だったのに...。

恐らくは元のオーナーが電池交換の際にでも壊してしまい,知識も経験もなく修理を試みたのだろう。ケースを開けない限り100%壊れることのない部分だ。この結果をもってして,「自分で修理した」と他言したり思い込んでしまっていないといいのだが。たまたまLED本体が上下ケースにぴったりはさまれた圧着状態で固定されるので,あんなに酷い状態でも運よく機能していたのだろう。まさか専門店の修理ではあるまい...,と祈っている。



分解したあと,よく観察すると90度曲げられた部分で足(リード)が2本とも完全に折れている。電子部品の場合,よくあるケースだ。残ったリードは極めて短いので,銅線でリードを作ることにした。下の左側写真を見ると,折れて短くなっているのがわかる。下側の足が折れたままの状態。上は銅線を巻きつけた状態。右の写真は2本ともに銅線を巻きつけて半田付けした後。



たまたま家のオーディオのスピーカーケーブルに使ったベルデンのOFC線の半端があったので,これの線を利用した。ベルデンのOFC(無酸素銅)線は硬いのでリード線代わりにちょうどいい。半田付けの際の熱の不足は先の通りの悲惨な半田付けとなるが,過熱は素子内部の損傷を引きこすので加減が肝心だ。それこそ経験の問題なのだが。

次に,写真の基盤の穴に新設した足を入れる。少し足が細いので折り返して2本にして差すことにした。両面基盤となっているので,裏と表で半田付けをする。完成後の写真は撮り忘れたが,がっちりと固定出来た。参考までにLEDは極性があるので確認が必要。



電池を新品に交換し,作動実験をしてみると,車体より50cm〜1m離れた場所からでも問題なくなった。赤外線リモコンは障害物は言うまでもなく,一般的に強い光のもとでは感度が下がるので,炎天下に移動し実験したが,以前よりもかなり感度が良くなった。電波式よりも赤外線式の方が電流消費量は多いように思う。

なお,周知のことと思うが,スマートのリモコン用のボタン電池は国内規格にないので,大きな電気屋に行っても恐らく置いてないが,ヤフオクで1個200円ちょっとで安定的に購入出来るので全く問題はない。




2009.06.18.

幌作動の不具合


いやいや,早くも来てしまいました,幌トラブル。聞くところによると,幌がうんともすんとも動かなくなることもあるようだ。メーカーも想定しているようで,車載工具としてクランク状の太いピアノ線の手回しハンドルが2本ついているだなぁ。嬉しいような悲しいような。

さて,うちのカブリオは中古で購入したものであり,その際に一番注意したのは価格が少々高めでも幌部分の状態がよいものを,ということだった。幌シート自体はちょっと前に純正品で交換されているようで,気になる痛みはなく,繊維のヘタリもなくシャンとしていて全体的に良い状態だった。

「幌の開閉について」のページにある写真のように,複雑な折りたたみメカ部(金属アーム周り)も外見では磨耗や変形もなさそうだった。店の話では,片側のモーターも幌シートと同時に交換されていたようだと言う。

今回の不具合はそれらの部分ではなく,幌シートを移動させる「ドライブケーブル」というものだった。最初の数回の開閉では全く違和感がなかったが,突然発症。症状としては,屋根の最後部まで移動後,一度停止し,ボタンをもう一度押すと後下にドサッと落ちるのだが,その際,ドライブケーブルが空回りしモーターのギアーをなめているようでバリバリという嫌な音を立てる。閉じるときも同様で,最後にロックする時点で同様の音がする。

開閉の作動自体は「まだ」問題はなかったのだが,「なめ」が重なると徐々にギアー部が削られ,やがては動かなくなるのは容易に想像がつく。それ以上に,あの音は精神衛生上極めて悪い。


このドライブケーブルというのは幌シートの左右両側の2本が一組になっていて,直径5mm・長さ1.5mくらいのもので自転車のブレーキワイヤーのアウターチューブのような感じ。表面はスパイラル溝があって,モーターに取り付けられたギアーに噛み合わさって巻き取られたり,伸ばされたりする。

作動の両端,つまり,ドサッと落ちるときとカチッと閉じ切るときにモーターに負荷が掛かると電源が切れるようになっているらしい。モーター側のギア(直結か組ギアになっているのかは不明)とケーブル溝の噛み合せが磨耗等によって遊びが出てくるとモーターに負荷が掛からず,結果とまるべき時に止まらず,空転し異音が発生する,というトラブル・メカニズムになっているようだ。一度磨耗により空転が起きると,恐らく加速度的に磨耗が進むということも経験上予想が出来る。

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この販売店の中古車の保証期間は3ヶ月。この異音が出始めたのは購入後2ヶ月くらいの頃だったが,遠方なのですぐに持っていくことが出来ない。それを説明すると保証期間内に発症・申告されているので,それ以降でも無償修理(元々の保証規定で部品代は実費)してくれるということで有難かった。

カブリオは元々,流通している台数は極めて少ないので,専門店でも修理経験がなかったり,豊富ではないようだ。ここのメカニックにとっても,ケーブルの交換修理は2〜3度目らしく,数日の時間が欲しいとのことだった。幌全体を一度外してケーブルを交換し,組上げるときに左右のテンションと位置を合わせるのが結構大変らしい。恐らく前に行ったときに泣かされたのだろう。

急がせて不完全な結果になるのが一番困るので,十分な時間を取ってもらって修理に預けた。結果,今回の交換修理でコツがつかめたようだった。工賃は保証適応で無料だったが,本来,作業時間を想像するに,恐らくはパーツ代の2倍以上は掛かるのだろう。

修理完了後,引き取り時に古いケーブルの状態を知りたかったが,メカニックが外出して不在だったので確認出来なかったのが残念だ。よって写真もない。その後は異音も当然なく,動きも全くもってスムーズだ。

余談だが,幌の開閉は平らな路面上で行う必要がある。前後の傾きは問題ないのだが,車体が左右に傾いている場合,特に片側のタイヤが低いなどねじれた状態で行うとロック爪がきちんとはまらず破損の原因となる。メカ部が破損すると,スマートのお得意のアッセンパーツ交換になるので,プラスティックの小さな部品が割れただけで50万円の出費となる...らしい。小さなプラスティックや金属のパーツならどこかに頼むか自作することも本気で考えないといけない。そうならないように,細心の注意をして開閉は行っている。修理の出費は楽しみにはなり得ないが,気遣いは手間というより楽しみのひとつなのだから。




2009.10.12.

幌生地のメンテナンス


さて,幌生地とリアウインドースクリーンの手入れだが,幌生地にはやはりUVカット及び撥水剤を使うことになる。苦労してネット上を探し回ったが,本当の布地の幌用のケア剤は殆どないようだ。恐らく,このサイトを見つけるのも苦労するだろうから,運よくここに来た人には,収集した情報を提供することにする。

化繊・ビニール系の幌に対応したものは,国内品では「モータウン」というところが数種出しており,布用のUVカット剤配合のシャンプー剤も1000円程度である。恐らくそれ以外にはカー用品としてはないと思う。 後は一般の布地用UVカット剤として「絹屋本舗」が光触媒タイプのものを販売している。

結局,良さそうなのを2点ほど発見したが,どちらも結構なお値段だ。幾らか安い方を買ってみた。もう一方はデータ紛失。どこだったか不明となってしまった。購入したのは,1USガロン(3.8L)で1万7千円位だ。運悪くガロン容器のものが在庫切れだったので,割高な小分けされたハンドスプレーのものを8個を同価格で買った。ガロン買いよりは284mlほど損だが,詰め替えの手間がないので良しとした。

一般に,ケミカル商品は結構売れるのだろうが,幌用のものは恐らくは滅多には売れないだろう。大容器の在庫がないのも無理はないし,送られて来たのも結構な期間ストックされていたに違いない。メーカーはアメリカの「Glen Raven(sunbrella)社」の「ファブリック・ガード」というものだ。日本では「大沢マリン」というところで販売している。船にも幌材は多く使われるし,この品も車専用ではない。

使用してみると小雨程度なら結構な撥水力で水滴がコロコロしているが,本降りになると駄目なようだ。が,中に染みて来ることはない。多分,ケミカルを使わなくても染み込みはないのだろうけど。この商品は単に撥水だけでなく,UVプロテクト効果もあるという。実は,こちらの効能を主に期待して購入した。真相は不明だが(笑)。幌を閉じて走行(や出先で露天駐車)している場合には紫外線をもろに受けるので,そのダメージによる退色や生地自体の劣化が心配だ。

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我が家の場合,基本的にはカブリオは雨天時には乗らないが,季節によっては,出掛けは晴天でも途中で降られることも少なくない。実際,一度短時間だが,豪雨に遭遇した。後で見たら,幌生地部からの雨漏りは皆無だが,ピラーの接合部から若干の雨漏りがあったようで,幌のインナーファブリックに染みが出来てしまった。

どのコンパチ車でも若干の雨漏りはあるようだし,スマートのカブリオの場合,ピラー接合部からの水漏れは構造上宿命的だとも聞いている。屋外で保管してある場合,結構な雨漏りで内部がベチャベチャになっている場合も少なくないようで,実際,そういうカブリオの中古を修理しているのを見たことがある。やはりカブリオの中古は,日常は車庫に保管されていたものを買わないと日焼けの面からも良くないだろう。

話は脱線するが,カブリオの幌は外側の丈夫な黒いファブリックと室内の薄い白のファブリックが1cmほどのクリアランスを挟んで2層になっている。この2枚の生地の間に空気の層があるせいか,グラスルーフのクーペより上部からの熱射はかなり穏やかだ。クーラーも意外なことにカブリオの方が効きが良い。勿論,クーラーは2台とも正常に働いている状態での比較だ。

通常の幌生地のメンテとしては,出掛ける前には必ず馬毛のブラシで埃を払い,上記のケミカルをスプレーしている。帰ってからは,硬く絞ったタオルで拭く。言うまでもなく,力を入れてゴシゴシはしない。この中古カブリオの幌は一度張替えられていてかなり綺麗な状態なので,この程度の手入れしかしていない。勿論,保管は屋根の下である。


写真左がプラスティック用,右がファブリック用。



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後部の幌には当然窓がある。軟質プラスティック(硬質ビニール?)なのだが,この部分の材質はとても柔らかく,爪で擦った程度でも傷になる。その上,この部分は自車の排気ガスのススが思いのほか溜まるようで汚れ易い。ここも走行の度に掃除する。硬く絞ったタオルでふんわりと掃き落とすように拭く。本来なら水を掛け,水圧で一度流した方がいいのだろうが,周りが幌なのでどうもわざわざ水を掛けることはしたくないのだ。

その後,ファブリック用と同時に買った同社の「エアロスペース・プオテクタント」という対UVプラスティック保護コーティング剤を拭きつけ,軽く乾拭きをする。これは艶出しと白化・日焼け防止効果があるらしい。この手のケミカルだと国産でも色々とあるし,効果はあまり変わらないに違いない。

紫外線に当たるとどうしてもプラスティックは白化したりもろくなったりする。炎天下でずっと保管していると茶色く日焼けしてボロボロになったりもする。白化や日焼けはやがては生じてしまうかも知れないが,なるべく長く持たせたいので柔軟性があるうちからケミカルを使っている。

それ以上に劣化(折れ・割れ・切れ)が心配なのは,透明なスクリーンを縁取りして幌に縫ってある部分の境目だ。幌生地の縁の切断面をプラスティックのパイプのようなもので覆ってスクリーンをかがってある。幌を折り畳む(オープン状態にする)とそこに折れ目が出来,伸ばしたり畳んだりで折れ目がだんだんと深くなってしまう。これは構造上どうしようもないが,この部分が紫外線で劣化して硬化して来ると,ヒビが入りやがては切れ目が現れて来るだろう。この部分も柔軟性を出来るだけ長く保てるようにやはり透明スクリーンの保護剤を掛けている。というよりスプレーがそこにも勝手に掛ってしまうのだが。