fokker D.V
 ● fokker D.V フォッカー D.5 ●

実機について


フォッカー社は,第1次世界大戦冒頭に活躍したフォッカー・アインデッカーシリーズを製造後,複葉のBシリーズやDシリーズを開発した。ちょうど,アインデッカーからドライデッカーへの移行期の最終時期にあたる機体で,尾翼部はアインデッカーの様式がそのまま使われている。
当時のフォッカーの試作機は,社内呼称のイニシャルがMで,M.10をベースに,翼間支柱が1対のB.I,2対のB.IIが開発された。B.Iのベースとなった機体は,M.7に近い構造のM.10で,特にM.10Eという呼称で区別される。このB.IにはオーバーウーゼルU.0(7気筒80馬力)が搭載され,B.IIには,U.I(9気筒100馬力)が搭載された。これらのBシリーズは,カウリングの下部が切り欠かれている。このBのイニシャルは,1915年中には軍規の改定により廃止され,以降は複座の偵察機にはCのイニシャルが当てられるようになる。

本件のD.Vは,D.Iからの発展型であるが,D.I(120馬力メルセデスD.II)とD.IV(160馬力メルセデスD.III)には,水冷6気筒インラインエンジンが搭載され,D.II(100馬力オーバーウーゼルU.I)とD.III(160馬力オーバーウーゼルU.III),D.V(100馬力オーバーウーゼルU.I)にはロータリー・エンジンが搭載された。

オーバーウーゼルのエンジンには,UとUrの2種類があり,フォッカーD.2とD.5には両方の記載あるが,年代的にはUではないかと思える。両者の違いはこちらのページを参照。

フォッカーD.5は1916年後半から量産が行われ,1917年当初から実戦配備が始まった。当時のフォッカー機は他社と同じ薄翼が使われており,また,搭載されたオーバーウーゼルU.Iは,低圧縮比ゆえの低馬力で,特に秀でた性能ではなく,アルバトロス社の戦闘機に大きく水を開けられていた。

機体の特徴としては,なんと言っても上翼の後退翼だろう。非常にカッコいい。また,上翼中央部がえぐられるように上方向に盛り上がっている(裏面がえぐられている?)のも珍しく,前方視界の向上の為の措置だと思われる。また,転倒時の怪我を避ける為に,機銃はオフセットして設置されている。

1917年中盤以降になると,フォッカー独自の厚翼を採用した社内呼称Vタイプの機体が登場し,量産機として有名な3葉機のDr.Iや,後に1次大戦にあったドイツの最優秀機とされるD.VIIへと移行し,この機体は練習機として前線を退くことになる。主力製造会社も,アルバトロス社からフォッカー社に移行する中で終戦を迎える。


主な緒元
・全長:6.05m
・翼幅:8.75m
・空虚重量:363kg
・最大重量:566kg
・最高速度:170km/h
・上昇率:3,000mまで19分
・航続距離:240km
・エンジン:オーバーウーゼルU.I 100馬力
・武装:Spandau IMG08 7.92mm機関銃 2門(プロペラ同調式)
・製造機数:216機


キットについて
スペシャルホビー Special Hobby 1/48
エデュアルドと並ぶ,チェコの最大手インジェクションメーカーのスペシャルホビーのキットである。同社は,複数のブランド名を持つメーカーで,1次大戦機も数多く発売している。このキットも数年前に発売された新しいキットですが,近年のエデュアルドと比較すると,やはり簡易インジェクションの域を出ていないが,さほど組み立てにくいという部分はなく,この手のキットに慣れている人にとっては,標準的な難易度だと言える。さほど詳しくはないが,大体の張線位置は記載されている。

3機分,2枚のデカールが付属しているが,扱いやすい。また,エッチングも含まれるが,ターンバックルも付属している。反面,シュパンダウの放熱筒のエッチングは付属しない。なお,垂直尾翼(ラダー)の色が,箱絵と組立図内の塗装指定が異なっている(同じ個体)が,おそらくは箱絵の方が正解だと思われる。


制作について  (2020.4)
所属不明 D.2782/16 パイロット不明

このキットは,現時点では,入手は容易だが,その割に作例が殆どない。実機の資料も,ウインドソックのデーターブックはあるが,それ以外には詳細な情報が得難い。

ということで,かき集めた当時の写真から判断して制作をした。胴体部は特に問題なく進められる。胴体とカウリングの接合部のズレも殆どなく,エンジンとカウリングの干渉もなかった。ただ,このタイプの全面可動式の尾翼は取り付けに工夫が必要だ。水平尾翼には金属線を植えて,垂直尾翼はそのままでは取り付けられないので,実機と同じ構造の支柱を追加した。また,尾橇部もディテールアップしている。

エンジンは付属するが,カム・プッシュロッドがないので,金属線を取り付けた。実際にはヘッド上部に取り付けられるのだが,そうするとカウリングと干渉するので,適当にお茶を濁した。開口部は面取りをして薄く仕上げている。なお,この機体の試作状態のものは,カウリングに下のオイル抜きの穴がない。

主翼下翼と胴体の接合部は,かなり苦労した。胴体は木製ではなく鋼管構造で,輸送の際には,下翼を抜き,上翼を胴体に沿って折りたたむようになっているので,実際には若干の隙間があると思われる。コクピット位置の両側にあるリングと角のようなパーツは,折りたたんだ上翼を固定するためのものらしい。また,エルロン前縁にカーテンのようなカバーが付いている。今回は面倒なので,エルロンはそのままの位置にしようかと思ったが,エッチングパーツで再現れているエプロンを取り付ける為に,エルロンを切り離すことになった。何のためのものかよく判らないが,他の機体では見たことがない珍しい特徴だろう。

翼間支柱は,鋼管の後方にフィレットを取り付けた構造になっており,キットに付属する支柱は構造的には実機に近いが,補強の為,いつものように両端に金属棒を植えていたところ,真ん中で折れてしまった。修理しようと思ったが,モールドがオーバー過ぎる上,太さが少し足りない感じたので,それを機会に4本とも作り直すことにした。

主輪部は,ダンバーが全く再現されていないので,ディテールアップし,車軸もプラが柔らかいので,タミヤの丸棒に変更し,車輪止めピンも追加した。

塗装は国籍マークは手描きで,機番はデカールを使用した。塗装は,何枚かの実機写真では,ドライデッカーの標準塗装となる草むら模様のようだが,その具合は個体差が大きく,はっきりしない。今回は,おそらくは実際とは若干異なるイメージの草むらパターンにしてみた。多分,胴体上面の左から右に流れる斜めの草模様は,その逆方向か,おそらくは左右にまっすぐであるほうが正しいと思うが,キットの指定に従ってみた。

Gallery 1

Gallery 2

Gallery 3

Gallery 4

Gallery 5

上のサムネールをクリックすると複数の大きな画像(1000dpi)に飛ぶ。表示された各画像を更に個別にクリックするとフルサイズ(1920dpi)の個別画像に飛ぶ。IEでは自動的にウインドーサイズに縮小されるので,その場合にはウインドー内を一度クリックすると拡大される。

 



プラモデルのトップへ戻る

掲示板へ行く