Oberursel(オーバー・ウーゼル)エンジン



フランスのグノーム社とル・ローヌ社のエンジンは,開戦以前にドイツのオーバー・ウーゼル社でライセンス製造されていた。グノーム設計のエンジンのコピー版は頭に「U」が,ル・ローヌ社のコピー版は,頭に「Ur」が付く。

構造はオリジナルのグノームやル・ローヌと同じであるが,ドイツの加工精度の低さから,オーバー・ウーゼル製のエンジンは不調や故障が多く,パイロットた達には不評であったらしい。このことを象徴する話が,ペータ・ヤコプスのフォッカーDr.Iで,彼はこのエンジンを嫌い,捕獲されたキャメルのクレルジェ・エンジン を自機に搭載していた。参考ページ



∪.Iのターボチャージャー付き図面



【グノームからのコピーシリーズ】

●U.0=Gnome 7 Lanmda 1913 80馬力 383台 
主な搭載機:Fokker A.II, A.III, E.I, K.Iなど
本ページ上下のオーバー・ウーゼル社の宣伝ポスターの機体に搭載されているエンジンがこれに該当する。

●U.I=Gnome 9 Delta 100馬力 1009台 
主な搭載機:Fokker D.II, D.V, E.II, E.IIIなど

モノスパッペの特徴がよくわかる。







●U.II=Gnome 18気筒試作エンジン(存在未確認) 200馬力


●U.III=Gnome 14気筒 Lambda-Lambda (ラムダ・ラムダ) 160馬力 595台
主な搭載機:Fokker D.III, E.IVなど

ダブル・ラムダとも称される



シングル・ラジアルの9気筒ロータリー・エンジンの出力限度は,200馬力程度と考えられていた。それ以上のパワーを得るには,副列ラジアルにするしかない。だが,9気筒のロータリー・エンジンが発生する強大な遠心力と,そこから生まれる厄介なジャイロ効果を鑑みると,シングル・ラジアルの2倍のマスを持つダブルラジアルのロータリー・エンジンが,果たして使いものになったのかどうか。なのに3重ラジアルのロータリー・エンジンも存在したようだ。

結果的に使い物にはならなかったのだろう。実はダイムラーの液冷直列6気筒は早くから完成していたが,その重量の大きさや出力の大きさから,当初の小型で華奢な機体には搭載できず,アルバトロスの登場で初めて実用に至った。1次大戦後の空冷星型エンジンは固定式へと移行する。



プロペラハブ部



【ル・ローヌからのコピーシリーズ】

●Ur.I = 詳細不明


●Ur.II=Le Rhone 9J 110馬力 575台
主な搭載機:Fokker D.VI, D.VIII, Dr.Iなど 1917





オリジナルとの比較
↑上はコピー版のオーバー・ウーゼル製
                 下はオリジナルのル・ローヌ製↓


裏面(コックピット側)



●Ur.IIa=Ur.II 110馬力の改良型 
主な搭載機:Fokker D.VI, D.VIII, Dr.Iなど


●Ur.III=160馬力(失敗に終わった?)211台 
主な搭載機:Fokker D.VI後期試作,DR1:



●Ur.IIIa=175(206)馬力(失敗に終わった?)1918年 
主な搭載機:Fokker D.VI後期試作 E.V






グノーム・ローヌ・クレルジェ・オーバー・ウーゼル以外にもジーメンス=ハルスケやベントレーもローターリーエンジンとしては有名である。それらを含めた参考資料(洋書)として「The Rotary Aero Engine」を紹介しておく。データが大きいので2部に分割した。
The rotary aero engine 前半

The rotary aero engine 後半