Sikorsky S39 ● シコルスキー S39 Sikorsky S39 ●

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実艇について

シコルスキー・エアクラフト(Sikorsky Aircraft Corporation)は,ウクライナ生まれ(帝政ロシア)のアメリカ人イーゴリ・シコルスキー(Igor Sikorsky)によって1923年に設立されたアメリカの複合企業で,現在はヘリコプター分野で世界トップクラスにある。



シコルスキーの機体に対して抱いている個人的なイメージは「変種(かわりだね)」である。実はそうでもないのだが,一部の機体は確かに斬新なスタイルをしている。ヘリコに限らず,S20番代以降このS39の飛行艇を中心とする双発,三発,四発の機体は見ていて非常に楽しい。これは単に自分が飛行艇(水上機)が好きだからに過ぎないかも知れないが。


S39は1930年前後に活躍した機体で,パンナムをはじめ,民間の会社で採用され第二次大戦中には民間の哨戒部隊などでも使用されていた。なかでも有名なのは,アメリカのドキュメンタリー映画製作者であったマーティン(Martin)とオサ(Osa)のジョンソン(Johnson)夫妻が購入した機体だ。夫妻は,アフリカやボルネオなどに複数回の取材を行っているが,1933年には,胴体をキリン模様に塗装したS39(「スピリット・オブ・アフリカ」)を使用するようになる。その後,S38という双発の少しキャビンが広い機体も加えて使用することになる。こちらはシマウマ模様に胴体が塗装されており,「オサの方舟(Osa's Ark)」と呼ばれていた。


夫婦は航空機を用いることで,これまで前人未到であった(現地人以外で)アフリカの奥地の取材を成功させた。古き良き時代のノスタルジックさだけではない本来の冒険心をくすぐるような写真が楽しい。夫マーティンは,最後のボルネオへの取材の帰路で搭乗したウェスタンエアーエクスプレスのボーイング247の事故によりこの世を去った。また,妻オサ・ジョンソンの自伝風の「ウガンダ」という映画が1940年に公開されていおり,「Martin & Osa Johnson Safari Museum」というのがアメリカにある。また,現在は,子孫によって作られた両機のレプリカが飛行可能な状態で現存している。現存するS38(シマウマ)の動画を見るにつけ,シコルスキーの設計の優秀さを証明するような飛行っぷりだ。

 当時の実機の写真ページへ

 レプリカされた実機の写真ページへ



S39とS38の動画

【S39】
離着水時の飛行動画【約2分】


プレーニングから離水【約50秒】


着水後の上陸の様子【約20秒】


機体の詳細紹介から飛行へ【約15分】レプリカなので,当時の機体とは詳細が異なる


操縦中の機内からの動画1:乗込・エンジン始動・離陸・飛行【約18分】レプリカなので,当時の機体とは詳細が異なる


操縦中の機内からの動画2:着水へ【約12分】レプリカなので,当時の機体とは詳細が異なる




【同型双発のS38】
レプリカ機の動画ばかりの中,貴重な当時(1933)の動画【約2分】


飛行・着水・着岸・エンジン始動・再離水【5分弱】


(機外からの画像)タキシング・離陸・飛行・着陸・タキシング【約4分】


水面からの上陸【約30秒】


レプリカ機の移送の為の倉庫内での分解の様子【約2分】


駐機中の細部・ローパス・着陸【約4分】


水上をゆっくり移動【約25秒】


エンジン始動・タキシング・ローパス【約90秒】



S39には「A・B・C・CS」の4タイプがある。エンジンはプラット&ホイットニーのワスプエンジンを搭載している。全タイプを合わせて26機が製造された。

緒元等(Type A)
全長:9.6m
翼幅:15.6m
最高速度: 185km/h
巡航度高:155km/h
着陸速度:86km/h 全備重量:1840kg
積載重量:530kg
発動機:P&W Wasp Jr-A R-985(300馬力)
乗員数:4~5名





キットについて
チェコ・マスター・レジン(Czech Master Resin)製の1/72レジンキット。

ポーランドやチェコやウクライナといった東欧では,非常に珍しい機種がキットとして制作・販売されており,楽しいやら嬉しいやら。が,ほとんどがいわゆるガレージ物で,完成させるには,なかなか手強いレジンキット達なのである。このメーカーのキットもそのひとつと言えよう。

このCMR製のキットの内容物は,レジンパーツと透明の恐らく塩ビ製のキャノピー(2セット分),2機分のカラースキームを含む組立図,デカールで,エッチングは含まれていない。古いキットには外箱がなく,ビニール袋入りだが,新しいキットは箱に入っており,かつ,上記のジョンソン夫妻の2機に関する数枚の写真入りのモノクロの解説シート(A42枚両面印刷の英文)も付属している。これは上記のジョンソン・サファリ博物館の協力によるものらしい。

レジンキットはメーカーによってその出来栄えは様々である。レジンで出来ているパーツは,スチロール樹脂に比べ,一般的に柔らかいというか腰がないので,元々の型抜き時に既に変形していたり,箱の中で店頭に長らく並んでいるうちに変形し易い。勿論,レジンにも柔らか目のものと硬めのものとがあるので,レジンキットは必ず変形しているという訳ではないが。もし変形が見られる場合には,お湯につけて矯正するのが常套手段である。一方,表面のアバタはパテやサフェーサーで埋めるしかないが,レジンキットにはなぜか表面モールドに優れているものが少なくなく,せっかくのモールドをパテで台なしにした後,時間と手間を掛けてモールドし直すはめに陥る。

このキットのパーツの出来だが,モールドは全体にもったりとしたダルさが少々気になる。支柱やブームには変形が見られたが,どうせ作り変えるので大勢に影響はない。一方で,表面の気泡穴や角欠けが少々見られる点が問題だ。これもまたどうせ使わないのだが,多数の支柱はタコ焼き状にくっついているのは,折れやすいパーツを保護するためにわざとなのだと考えることにする。また,「大きな台座」ニョキニョキと生える細かいパーツはレジンキットでは常道だ。

下のギャラリーにパーツ状態の写真を載せたが,インジェクションキットと比べると無体なものである。しかし,1/72の飛行機のレジンキットとは往々にしてこういった出来である。付属のデカールはあまり質が良くない。ノリシロが妙に広く,カットしないと使えないし,ノリはほとんど効いてない。

ただ,有難かった点は,合いが割りとまともであったことだ。特に複雑な構造の翼とフロートの支柱の取付位置は,パーツのマークのままで殆ど大丈夫だった。逆に,沢山ある窓ガラスの合いは非常に悪く,苦労させられた。レジンキットの制作には超音波カッターが重宝する。ちなみに愛用は,一頃よりも安価になった本多電子のUSW-334である。消耗品である刃を挟むアルミ削り出しの小さなコレットが1個千五百円もするのには閉口する。


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レジンキットとしての出来は,まぁ,標準的と言えよう。折角面白い形の航空機をキット化するなら,今ならMPMなどにOEMを頼むという手はないのだろうか。素材がレジンでなくプラだと手を加えるのも楽なのであるが。

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制作について  (制作2011年霜降の後)

手に入るl資料はあまり多くはないが,現存する機体なので,博物館や航空ショウでの写真があり,そこそこディテールアップ出来た。もっともレジンのキットはディテールアップ作業の為にあるようなもので,素組みというのは殆ど不可能だ。

それは単に「ディテールアップ」というだけでなく,構造的にも手を入れる必要がある。例えば今回は操縦席や客室内部やエンジンなどはディテールアップの為にスクラッチしたが,支柱は強度の為に作り直した。

改造箇所
なんといっても沢山の支柱がこの機体の特徴だ。レジンではすぐに折れてしまう。複葉機作りなどでよく使われる方法に,真鍮パイプに真鍮線を入れて叩いて翼型に整形するというのがある。完全な強度を出せるし,翼型断面の支柱制作にはよく使われる。この時代の実機も支柱本体は丸棒で,その周りに翼断面になるように金属板などでカバー整形されている。胴体や翼と支柱との接合部には丸棒が周りのカバーから見えている状態で,今回の模型で見られる真鍮棒は組立ての下手さ故に補強線材が見えてしまっているのではなく「再現」である。念の為。

個人的にはあまりメタル素材(エッチングも含め)は好きではないので,今回は(も)厚さ1mmのプラ板を細く切り,翼断面に削ったものを支柱にし,胴体や翼への取り付け部には0.3mmと0.5mmの真鍮線で骨を通して固定した。1/32程大きくなると,金属棒(線)の補強はなくても大丈夫だが,48や72になると,直接取り付けると必ずあとから外れてしまう。よって取付部の線の埋め込みは必須作業だ。カラヤのレジンキットの一部には,元から支柱に金属棒を埋め込んでくれているものもある。

タミヤのプラ板はしなり加減も適当で強度も高い。また,同じく丸プラ棒は伸ばしランナーとして使うとこれまた丈夫で切れにくい。わざわざ金を出した買った丸棒をライターで炙ってしまうなんてもったいない,という声も聞いたが,キットのランナーを伸ばすと非常に弱いのだ。これは,伸ばしランナーを好み常用している私には大変重要な選択なのだ。と,話が逸れたが,この削りプラ板の支柱は,キットのものと比べるともう少し0.1mm~0.2mm細くてもいいようだったが,芯線の埋め込みなどを考え,かつ実機の写真を見るとこのくらいの太さがいいように思え,そのままにした。

元キットの支柱の長さを移してプラ板で支柱を作り,全ての両端に金属棒(線)を埋めたら一度全部を胴体と翼とフロートに差して具合を見る。水平と直角と平行を確認しながら,長さを微調整する。ちなみに,主翼後部から尾翼に至る2本の太いビームもプラ板に作りなおした。今回は,後ろのV時支柱と翼と胴体の屋根をつなぐ2本の短い支柱の3点をきちきち気味に固定し翼と胴体の平行,迎え角などを決定し,その後,各支柱を一本ずつ仮組みして,最終的にすべてがしっくり収まった後に一度全て解体,フロート部の支柱群と胴体部の支柱群に分けて組み直し,塗装後にそれぞれを接着した。まぁ,ツッコミ処は多々あれど,文句がある奴は自分で組んでみてね,ってところだ。

エンジンに関しては露出しているので見せ場の一つなのではあるが,いかんせん1/72ということで程々にしておいた。とは言え,パーツ大幅に作り替えてある。また,プラグコード・プラグキャップ・プラグも当然追加してある。翼端灯と尾灯は久々にクリアパーツで作ってみた。1/144の2次大戦機以来だ。なぜならその後ずっと作っている1次大戦機には翼端灯はないからだ。

キャビン内部は,感じの良いソファーなども付属しているのだが,ちょっとスケールが大きい。そこで,客室のソファーとお茶セットに各窓のカーテン,また,前方のパイロットの席は自作,メーターも自作デカールを使い,幾つかの機器も追加してみた。中はあまりよく見えないが,作らない訳にはいかない。

この飛行機の乗り降りは上部のハッチから行う。理由は,実際の離着水の動画を見ればわかるが,胴体側面にハッチは作らない方が賢明だろう。よって,上部のハッチは開状態で作り直し,ついでにその後部の荷物室らしきハッチも半開状態で作り直した。写真では上手く捉えられないが,実物を上から覗き込むと,客室と操縦室の様子がよく見える。

今回はプライザーのお人形を動員した。と言っても,全部が戦車兵なので,完全に利用しているものはない。ヘルメットをそぎ落とし,髪の毛を生やし,軍服を脱がせて,一人は性転換までさせられてしまった。ポースの変更などは皆さん同様だろうが,手足が義手や義足(プラ棒と瞬間パテ)になった者さえ居る。まぁ,全体的な雰囲気重視なので,あまりこだわってはいない。が,存在感は十分にある。普段は飛行機にはお人形は載せないのだが,旅客機には乗っている方が雰囲気が出ていいのかも知れない。

塗装はシェルが保有していたらしい機体に仕上げた。実はもう一機同じものを作るつもりで,そちらは例のキリン模様のスピリット・オブ・アフリカにしようと思っているが,今回かなり堪能させられたので,いつになるやらわからない。垂直尾翼のマークのみ付属デカールを使用した。また,この機体にはなかなか複雑な張線があるのだが,今回,複葉機用に先日入手したウイングナットが販売している糸を使ってみた。30mで約1300円(送料込み)と安くはないが,ものは試しだ。ゴムのように収縮性があり,引き具合によって太さを調整出来るので,1/32~1/72位まで利用出来そうだ。使い勝手も悪くないし,結ぶことも出来る(仕上げは瞬間で止める必要がある)。また,わざと捻ることでワイヤーの撚り感が出せたりもするが,余計なところで撚れてしまうこともある。塗装も可能だ。やはり自分には伸ばしランナーの方がしっくり来る。今回の張線材はこの糸と伸ばしランナーと真鍮線の3種を場所によって使い分けた。 



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上記動画元サイトへ

エアロドーム(参考サイト)

バーチャル・エアクラフト・ミュージアム(参考サイト)


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